303 つながりたい:間に合うかもしれない

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数年前、母親は癌で死んだ。その際に母親とは何も話をしなかった。母親は父親と結婚する前に好きな人がいたらしい。私を宿したとき、その人の子供だったらよかったのにと思っていた節がある。母親の死後、可愛がっていた猫(16歳)が死んだ。次の猫(19歳)も死んだ。死というものが心に響いた。
今度は父親が癌で先が短いかもしれない。父親とは話ができる。自分が変わってきたと思う。話ができるのが「良いな」と思う。昨日も台風で、出かけるのに手を握った。心配で親(父親)の手を握った。「階段滑るよ」とか優しい気持ちが出てくる。してやりたい、いてやりたい、気にしてやりたい、と思う。弟は一緒に行くが付いていくだけ。以前は自分もそうだったのかもしれない。自分の親とつながりたい。
治療の事もちゃんと全部知りたい。今までは無関心な方が都合が良かった。今は父親の事を全部知って見ていたい。どんどん弱っていったとしても全部自分の中で受け入れて納得したいというのがある。父も寂しいから気にかけて欲しいのではないか。それが分かる。気にかけてあげて甘えさせてあげたい。
家の土地の証明証、印鑑、通帳を教えてくれた。最後だから「お金を使った方が良い」「世界一周しろ」とか言った。お金はいらない。本当の話をして父親とつながりたい。
父の死を前にして、母の死、はじめの猫(16歳)の死、次の猫(19歳)の死が繋がっている。死という窓を通して何かが分かり始めている。納得する事をやってあげたい。3匹目の猫(20 歳)は生きている。 自分も生きることに間に合うかもしれない。この世とつながりたい。

 

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