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事実のみが人を癒す|周りの人は分かっている|セラピーの現場から(689)

「W」
事実のみが人を癒す、ということがありますね。
事実を曲げて人を慰めるのは、単に慰めるだけで、本当の癒しにはならない。
「H」
そうですね。
しかし、それは究極のところです。そのところへ行くまでは、誰でも母親が自分を愛していなかった事実を認めるのは辛い。
「W」
特に小さな子供にとってはそうでしょう。そして、その事実は心の傷となります。しかし、子供は心の奥では知っています。知っているから傷を受け、閉じます。閉じたまま大きくなり、トラブルを抱えます。
「H」
セッションの初期の段階では、事実を認めるのは辛いけれども、トラブルのままは嫌です・・と。
「W」
認めるという辛い作業なしで、トラブルを解消したいと、いう気持ちになるのももっともです。しかし、そんなうまい方法があればいいのですが・・・。
「H」
セッションでは行きつ戻りつしながら、事実を認める辛さと、トラブルの辛さの間で、揺れながら、自己成長していきます。そばにいて、そのお手伝いをするしかありません。慰めが欲しくても、欲しいことを認めてあげるだけです。慰めを上げるわけにはいきません。
「W」
グループカウンセリングなどで、人のことは良くわかる。事実を認められなくて慰めが欲しくて苦しんでいるのがよくわかる。しかし自分の番になるとそうはいかない。同じように認められなくて苦しむ。周りの人は皆分かっている。
「H」
見ているこちらも自分の事のように辛くて、稀に、この人にこれ以上は無理なのかな、と思うことがあります。
「W」
そんな時、瞬間的には事実を認めることもあるのに、直後に、せっかくわかった事実を否定する。そうすると、もっと症状がひどくなる、ということがありますね。
「H」
瞬間的には事実を認めたが、本当には認めきれずに、防衛が働くのです。揺り戻しです。
「W」
でも、あるときその事実を本当に認められる地点にやってくる。劇的な場面です。多くの涙と本当の癒しが同時にやってくる。その時になって今までの慰めは全く色あせてしまう。役に立たなかったことが分かる。
「H」
感動的な場面ですね。
「W」
事実こそが深い癒し。そのことを体感できれば、事実の否定はばかばかしい。
いちど事実を受け入れた後は、あまりの清々しさに、なぜ自分が否定を続けたのかさえもよくわからない。思い出すことができにくい。

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