すらすらと思い出せる記憶は不具合の原因にはなっていない|セラピーの現場から(541)
自分の成長の手掛かりとなる辛い記憶は、時間をさかのぼるほど、重要性が増すようです。現在の悩みは、職場のこと、結婚相手のこと、自分の子供のこと、かもしれません。しかし、いろいろなケースの体験から見ますと、悩みを認識できるということは、その時代には、隠された記憶はない、ということになります。認識できるということは、心の中で、既に折り合いがついていて、そのため、心の不具合の原因にはなっていない、ということが言えそうです。
ですから、手掛かりは、もっと昔になります。結婚前の家族のこと、青年期、少年期をすらすらと思いだせるのであれば、その部分にも隠された記憶はないといえます。いよいよ幼児期、乳児期を探ることになります。ところが人生の初期の記憶はもともと、はっきりしません。そこで、ベビーブレスが役に立ちます。多くの場合、記憶の断片が手に入ります。その断片を組合せ、幼児期、乳児期を少しずつ知ることができます。組み合わせる上で、カウンセリングが役に立ちます。隠された辛い記憶がよみがえります。その過程では、辛ければ辛いほどよみがえりにくいようです。抵抗と呼ばれるものです。よみがえった辛い記憶を認めるのに数週間、数か月かかることもあります。空いた時間も自宅で想い出すように瞑想を勧めます。カウンセリングの記録も渡し、読んでもらいます。その間にじわじわと成長が進みます。まるで心の漢方薬。苦いけれど効く。人によっては、次に会ったときに、雰囲気や表情まで変わり、皆が驚くことがあります。
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