カウンセラーの対談
アコールのカウンセラー林貞子・雲泥諸智による「アダルトチルドレン」「共依存」 について
アコールのカウンセラー林貞子・雲泥諸智による「アダルトチルドレン」「共依存」 について
「アダルトチルドレン」と言う言葉は、狭義には、アルコール依存症に関する言葉でした。すなわち、アルコール依存症者が居る家族の中で子ども時代を育ってやがて大人になった人のことをいい、正確には「アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス」というものでした。「アダルトチルドレン」の特徴としては、下記の【アダルトチルドレンの特徴】【アダルトチルドレンの症状】【アダルトチルドレンの5つの役割】に列記されることがいわれています。
また、「共依存」と言う言葉は、狭義には、そのアルコール依存症者とそれを支える配偶者との関係を言うものです。被害者であるはずの配偶者の側にも問題があるということです。「共依存」の特徴としては、【共依存の五つの診断基準(チェルマック)】【共依存の15の特徴(ウイットフィールド)】【共依存の17の特徴(シェフ)】に列記されることがいわれています。
これらが、次第にアルコール依存症という粋を超えて広い意味で使われるようになり、前者は、家庭がうまくいっていない「機能不全家族」の中で大人になった人たちにも当てはめて用いられるようになりました。(〔アダルトチルドレンと共依存〕(緒方明著 誠信書房)などから)
雲泥 : このようにアルコール依存症者の家族の中で子供時代を過ごし今は大人になっている人たちをアダルトチルドレンと呼ぶわけですが、その人達も、生きていくために自分の周りに生きやすい状況を作る。つまり自分の周りに、共依存と言われる人たちを集めて生きていくという現象に見えます。
そのような現象は、アルコール依存症者がいた家族には限らずに、違う依存、例えばギャンブル依存、薬物依存、買い物依存、・・・などの依存症者がいた家族の中で子供時代を過ごし今は大人になっている人たちにも、言えるわけです。さらには依存症者がいるかいないかにかかわらず、広く機能不全家族の中で子供時代を過ごした大人にもいえると言う訳です。
機能不全家族の殺伐とした雰囲気の中で大きくなり、心に傷がある人は、同じような傷を心に持つことで、互いを理解でき、自分の傷を支えてくれるような人を配偶者に選び、そのような人たちと生きていこうとするので、結局は同じような種類の人たちと生きていくことになる。お互いに支え合うような共依存の関係ができてしまう。それは、ある意味では生きやすく都合がいいことではあるんだけれども、共依存の関係を突破できないという不具合がある。また、子供にも同じ傷を作ってしまう世代間伝達ができる。
アコールでは、その人(クライアント)がアダルトチルドレンか共依存か等の峻別には重点をおきませんが、その人の心の中にある傷がどのようなものかは、すべてのエネルギーを使って認識しようとします。その人との共同作業です。傷は個々人によって千差万別であり、一人一人の傷が正確に深く理解されなければならないと考えます。
その人の傷が、たまたま「アダルトチルドレン」と呼ばれるものだったり「共依存」と呼ばれるものだったりするに過ぎない。大切なことは、どれだけ深く認識できるか、どれだけ実感として認識できるか、ということです。認識が突破口になります。
幼いときにひどい状況で過ごしたので、今の自分があるのだということ、いまの自分を支える環境として配偶者を選び、周りに同じような人を集め、そしてその人たちとも依存し合うような状況を作っていること、それで苦しんでいること、を認識しなければいけません。深く実感として認識することから、改善が自然に起きてくる。
それと、アコールで非常に成果が上がっているのは、機能不全家族のなかで単に記憶のある幼い時期から生きたということだけでなくて、もっと早い時期、記憶を持たない乳幼児時期も非常に大きな影響があり、その時期も実際に観ていける手法(ベビーブレス)があるということです。経験から特に、更に奥の胎児期を一番重要視しています。機能不全家族の影響は胎児期からあります。
林 : 自分が「アダルトチルドレン」と呼ばれる症状だったり「共依存」と呼ばれる症状だったり、そのことが分かって治ると言うことはとても大事なことですが、アコールでは更に、症状の元となる傷を再体験することで、本当に回復していくことを狙っていますし、効果が上がっています。傷そのものに触れて回復するんです。
雲泥 : そうですね。自分が「アダルトチルドレン」、「共依存」という状況にある事を認識するより深く、そういう現象が起きているところの一番深い「傷」を再体験することができる非常に強烈な手法が、アコールでは確立してますね。
心の「傷」といっても、通常の意識で認識できる程度の傷はたいした傷ではない。例えば、アルコール依存症の父親なり母親なりから自分がされた仕打ちや心の傷をぼんやり覚えていて、そういえば自分は「アダルトチルドレン」だし、「アダルトチルドレン」の特徴も備えている、と見ていかないといけない。でも、それは何とか通常の意識で認識でき、そのように認識できる傷は表面的なものに過ぎない。従って、効果も表面的なものになりかねないですね。
重要なのは、更に深くその傷そのものを再体験することです。アルコール依存症の父親なり母親なりから自分がされた仕打ちによって、あるいはそのような家族の中に居ることで、赤ん坊の自分がどういう不安を持ったか、どういう恐怖を持ったか、それをその当時味わったであろうような不安や恐怖として、もう一度味わうということです。場合によっては胎児の自分が味わった感情も再体験します。
そのような再体験によって、初めて得られる深い納得のようなものがある。納得して、初めて症状が消え始める。自分で何とかして消すのではなく、自分で努力するのではなく、単に消え始めるのです。
このような自分の普通の力では認識できないような領域の傷を再体験できるベビーブレスが極めて有効です。言葉を超えて体験ができる。
その体験を、後のカウンセリングでなんとか言葉を与えて、言語的な解釈を起こして、自分の現在の感情とリンクさせる。ただ単に密閉された防音室で起きた異常な体験として放って置くのではなくて。もっとも、放って置いても効果があるのはしばしばなんですが。再体験したことを、自分の現実の生活の中で認識できるレベルで維持する。自覚する。自分にはこういう深い傷があるということを、言葉で表現できるほうが良いのでカウンセリングする。結局それは自分の深い傷を認識し自覚するということになります。
[狭義のアダルトチルドレンの特徴]
〔アダルトチルドレンと共依存 緒方明 誠信書房〕
「アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス(ACOA)」著者ウオイティツによる狭義のアダルトチルドレンの13の心理的特徴
1. アダルトチルドレンは、正しいと思われることに疑いを持つ。
2. アダルトチルドレンは、最初から最後まで一つのことをやり抜くことはできない。
3. アダルトチルドレンは、本音を言えるようようなときに嘘をつく。
4. アダルトチルドレンは、情け容赦なく自分を批判する。
5. アダルトチルドレンは、何でも楽しむことができない。
6. アダルトチルドレンは、自分のことを深刻に考えすぎる。
7. アダルトチルドレンは、他人と密接な関係を持てない。
8. アダルトチルドレンは、自分が変化を支配できないと過剰に反応する。
9. アダルトチルドレンは、常に承認と称賛を求めている。
10. アダルトチルドレンは、自分と他人とは違っていると感じている。
11. アダルトチルドレンは、過剰に責任を持ったり、過剰に無責任になったりする。
12. アダルトチルドレンは、忠誠心に価値がないことに直面しても、過剰に忠誠心を持つ。
13. アダルトチルドレンは、衝動的である。行動が選べたり、結果も変えられる可能性があるときでも、おきまりの行動をする。その衝動性は、混乱や自己嫌悪や支配の喪失へとつながる。そして、混乱を収拾しようと、過剰なエネルギーを使ってしまう。
*アダルトチルドレンの心性(症状と呼ぶには躊躇するそれらの特徴を「心性」とした)クリッツバークによると恐怖心、怒り、精神的な傷つき、恨み、邪推、孤独感、悲哀、屈辱感、自責感、無感動が認められる。さらに、悉無律(オール・オブ・アナン)形式による絶対的確信、情報不足、脅迫的思考、優柔不断、学習の障害、混乱、過敏などがあり、危機志向型人生を送り、操作的行動、親密性の障害、楽しむ事の困難、注目を引くための集団への参加などが見られると言う。
また、カーンの臨床的観察によるとアダルトチルドレンの心性としては、内なる感情を同一化する能力の障害、危機に遭遇したときの経験不足、見捨てられ感情、親密性を育む障害、介入や変化への抵抗が認められているという。
また、コントロール群を設定したブラックの研究では、依存、同一化の障害、感情表現の障害、親密性の障害、他人を信頼する力の障害などの特徴があるという。
[広義のアダルトチルドレンの特徴]
これらのアダルトチルドレンの心性はクリッツバークによるとアルコール依存症家族の4つのルールに起因しているという。クリッツバークによる「アルコール依存症家族」や「機能不全家族」に暮らしている広義のアダルトチルドレンの家族の4つのルール
1. 「否認」(ディナイアル)
アルコール依存症を認めない。嘘つきの夫や父親を認めないルール。自分の家族は問題がない家族であると歪んだ家族システムを認めないと、聞いたものや見たものの「正常」と「異常」の判断がつかなくなり、最後には自分のこころのなかに湧き上がる感情も否認してしまう。
2. 「硬直性」(リギディティ)
夫や父親が飲酒して暴れたりするなど予測できない事態がいつ起こるかが分からないので、家族はこころを閉じ、構えることになる。こどものこころは豊かに育まない。
3. 「沈黙」(サイレンス)
飲酒によって起こった悪い出来事やその時の感情を家族以外だけではなく家族同士も話さないようになる。この沈黙のルールも、豊かな感情を持つ子どもを育てない。
4. 「孤立」(サイソレーション)
飲酒によって起こったことが、他人に知られないように、家族は近所の人とも交わらないようになる。家族同士も孤立し合う。このルールは、人間同士の「親密性」を育まなくなる。
フリエルとフリエルによるとその多くの部分が「否認」から生じているという。酒を飲んで頼りにならない父、繰り返される両親の不和などの慢性的な「家族内トラウマ」からこころの防衛をするためには、子どもは自己を「分裂」(スプリッティング)させて、もうひとりの自分となって現実を「否認」するしかない。その結果として、現実の日常だけではなく、内なる自己の感情も「否認」し、他人との親密性を拒否し、自己をコントロールしてしまう。分裂、価値観の切り上げや切り捨て、投影性同一化、否認などの「原始防衛」を大人になるまで用いつづけたり、慢性的な「見捨てられ感情」にさいなまされ、不安にさらされたり、抑うつになったり、共感されない人生を送る。また自分の気持ちを抑圧するなどの「神経症性防衛」などを用いることもある。
それらの結果として「境界型人格障害」や「自己愛的人格障害」などの人格障害や、「不安神経症」や「強迫神経症」などの神経症、あるいは「嗜癖」などの「症状」を呈するアダルトチルドレンになっていく人もいる。
うつ病、不安障害、パニック障害、恐怖症、強迫性障害、解離性障害、人格障害、同一性障害などが認められているという。さらに摂食障害、嗜癖(アディクション)、胃潰瘍や大腸炎などの消化器障害、睡眠障害、呼吸器障害なども出現するという。クリッパーはこれに加えて、肩凝り、背部痛、性的機能障害、アレルギーなども認められるとしている。
クリッツバークによると、アダルトチルドレンは「アルコール依存症」や「機能不全家族」のなかで「生き残り」(サバイバー)となるためには5つの「役割」を担っているという。一般的には、この「役割」は「役割理論」(ロール・セオリー)と呼ばれている。
1. 「家族英雄」(ファミリー・ヒーロー)
勉強やスポーツなどで高成績を上げて家族がよく見えるようにする子ども。(クリントン大統領もそう)
2. 「道化者」(クラウン)
家族のなかで面白く振る舞い、葛藤を減少させる子どもを意味している。別称「マスコット」
3. 「なだめ役」(プラケイター)
家族の仲介役をとる子どもを指している。クリントン大統領も「子どもの頃から、常に混乱を最小限に抑えようとしてきた、調停者として育った」と述べている。別称「世話役」(ケイ・テイカー)
4. 「犠牲者」(スケープゴート)
問題を起こして自分が問題者となり、家族の問題を子どもの問題へと転換させる子どもを意味している。
5. 「いなくなった人」(ロスト・ワン)
目立たないように存在しないことによって注意を自分の方へ引こうとする子ども。「失われた子ども」(ロストチャイルド)とも称呼されている。
フリエルとフリエルはこれらの5つの役割の他に4つの役割を追加している。
1. 「ママの王子様」(マムズ・リトル・マン)
2. 「パパの女王様」(ダッズ・リトル・プリンス)
3. 「頑張り屋」(ドゥーア)
4. 「奉仕者」(セイント プリースト ナム ラビ)
1,2は母子癒着や父子癒着の側面を持っている。問題のある家族では、子どもが夫代理や妻代理をして、母親や父親の寂しさや空しさを癒す役割を持っている。
共依存の特徴
五つの診断基準
精神科医チェルマック著「共依存の診断と治療」の中から
1. 逆境に直面したときに、自分や他者の感情や行動を支配したりすることに自己評価を起き続ける。
2. 自分の欲求ではなく他者の欲求に合わせることが、自分の責任だと思い込む。
3. 親密性や分離に関して不安や境界の歪み。
4. パーソナリティ障害者、嗜癖者、共依存者、衝動的な人とあいまいな関係がある。
5. 次の少なくても3つが存在する。
(1)過度の否認 (2) 感情の抑圧 (3) 抑うつ (4) 過度の用心深さ (5) 強迫性 (6) 不安 (7) 物質乱用 (8) 反復する身体的、性的な虐待の存在 (9) ストレス性の病気 (10) 物質乱用者と少なくても2年以上関係がありながらも援助を受けないでいる。
ウイットフィールドは「共依存を」「自分らしさの喪失」としている。その15の特徴。
(1) 救済者
救済者は自分の事は無視して、他人を救ったり援助しようとする。自分のアイデンティティを見失っている。彼らは「機能不全家族」で生きる残るサバイバルの手段としてそのほうな方法を学んだ。
(2) おべっか者
おべっか者は他人と不健全な境界を持っている。自分の望みや欲求を抑圧し、他人に黙従しやすく、「ノー」が言えない。おべっかは、他人を操作したり支配する一つの方法である。
(3) 高成功者
高成功者は「真の自己」の喪失で空しさを感じ、その空しさを成功することによって埋めようとする。「家族英雄」の役割を担う子どもはなりやすい。
(4) 自信喪失者
自信喪失者は高成功者と同様に空虚感を感じている。自己評価が低く、屈辱を繰り返して感じている。
(5) 完全主義者
完全主義者は失敗を怖れている。最悪のことやミスを犯すことを避けたがる。自己犠牲を冒しても、完璧にすることで頭がいっぱいである。
(6) 犠牲者
犠牲者は慢性疾患を持つ病人や、いつも問題を持ち続ける非行少年やスケープゴートの悪者になりやすい。「誰も自分の事を分かってくれない」といつも不平を言っている。
(7) 殉教者
殉教者は自分の内の悲しさ、誤解、苦悩、希望のなさなどを否認して、他人を助けようとする。表面的にはよく見えるので、殉教者の犠牲心は分かりにくい。信心深く、援助するのが最も困難である。
(8) 嗜癖者
嗜癖者は「機能不全家族」に育っている。摂食障害、ワーカホリック、浪費や買い物中毒、ギャンブル中毒、人間関係の嗜癖などを呈する。
(9) 脅迫者
脅迫者は嗜癖者と類似しているが嗜癖者より悪い結果にはならない。社会的に容認されている脅迫的行動を持っている。家族や友人や援助専門職から気づかれることがある。
(10) 妄想者
妄想者は過剰に自信があり、誇大的である。男性であればマッチョとなり、女性であれば、過剰に女らしく弱々しくなるかもしれない。この外見は、自我の誇大感に関係している。
(11) 自己愛主義
自己愛主義者は自己評価が低いので、周囲からの注目を自分に集めようとする。これは「共依存者」が自分を犠牲にして他人に焦点を置くのと対照的であるが、自己を喪失して、他人を鏡にしているという理由では共依存的である。
(12) いじめっ子
いじめっ子は不安定で「真の自己」から切り離されている。自分自身をコントロールできると感じたいので、身体的、感情的に他人を支配する。
(13) 虐待者
虐待者は、いじめっ子と同様に不安定で「真の自己」から切り離されている。自分自身をコントロールできると感じたいので、身体的、感情的に他人を支配する。
(14) 失われた子ども
失われた子ども(ロスト・チャイルド)は「機能不全家族」の第三子や、同胞中で後で産まれた子に多い。「家族英雄」である年上の同胞や、非行やいじめをやっている第二子と争うために注意を引こうと努力する。しかし最後は諦めて引きこもる。
(15) おどけ者
おどけ者は「マスコット」や「ファミリーペット」とも呼ばれている。おどけることにより、家族の興味を引こうとしたり生き残ろうとする。このような行動は、成人してから、親密性や痛みから防衛するようになったり、他人を操作したり支配したり、傷つけたりする。ユーモアは諸刃の剣である。
共依存の17の特徴
シェフによる「共依存」臨床特徴
(1) 不正直(否認、投影、妄想)
他者の期待に添うことに重点を置いているので、不正直となる。
(2) 感情の障害(凍りついた感情、歪んだ感情)
家族に歪みがあり、家族に秘密があると、幸福感、肯定的感情、怒り、痛み、罪悪感などの感情を抑圧する。
(3) 支配
全てをコントロールしたがる。他者の評価を変化させようとするが、失敗に終わることが多い。要するに「負けを認めたがらない」。
(4) 混乱
他者をコントロールしようとして失敗すると混乱に陥る事がある。
(5) 思考障害
強迫思考があり、ときには精神分裂病に見られる強迫思考よりも脅迫的である場合がある。
(6) 完全主義
完全主義は、ひとつの嗜癖システムの特徴でもある。パーフェクト以外は意味がなくなり「まだ十分ではない」「まだ完全ではない」と言う。
(7) 他者志向性
他者から善人と見られて評価されたいので、印象操作をおこなう。自己評価や自分の認識を信じていない。
(8) 依存
他者に依存したり、自己評価が低いので、他者の世話焼きをする人になる。また自分を価値のない者としか見ていないので、他者の世話焼きによって自分の満足を満たす。
(9) 恐れ
自分の人生でやっていることの多くが恐れに満ちている。そして、それが嗜癖お基礎となっている。
(10) 強剛性
自分の築き上げた幻想の世界にしがみつこうとして、一つのことにこだわる。
(11) 批判主義
自己評価が低くなり、他者をコントロールできないと他者に批判的になる。
(12) 抑うつ
他者の評価や認識をコントロールできないと自分で抑うつ的になる。
(13) 劣等感、誇大主義
共依存者は劣等感が強かったり、逆に誇大主義になったりする。
(14) 自己中心主義
自分が世界の中心であると信じており、他者がなぜ怒っているか理解できない。
(15) 道徳観の欠如
道徳観の欠如が不正直であるが、自分に嘘をつくことは自分や他者にも破壊的となっ
てしまい、魂は退行してしまう。
(16) 無感動や無欲
共依存者はすべての動きが止まった(ステーシス)ように、無感動になったり無欲担ったりする。
(17) 悲観主義
すべてをコントロールをしたがるが、それは失敗に終わることが多いので悲観主義となってしまう
雲泥 : アコールに来てくれる人(クライアント)の中で体の不調を持っている人は多いようです。ただ、かなりセラピーが進んだあとで、その人が話をする中で「実は長年の頭痛(あるいはめまい、腰痛、肩こり、リューマチなどなど)がいつのまにか消えていたんです」というのを良く聞きます。
体の不調が心のトラブルを原因として起きることは一般的に経験されることですが、その不調が「心身症」(下記【心身症の例】参照)なのか「神経症」によるものなのかという区別は、「アレキシシミア(失感情症)」の概念を使ってできるということです。簡単に言えば、同じような体の不調でも、「アレキシシミア(失感情症)」を伴えば「心身症」、伴わなければ「神経症」という区別です。
この区別自体は、セラピーを受けるものとしては治ればいいことですから、あまり重要ではないかもしれませんが、ご自分のことを理解するうえではとても役に立ちますし、アコールのセラピー現場では頻繁に目にすることができます。
アレキシシミアとは、失感情症、感情を失ってしまう、という専門的な言葉ですが、アコールのベビーブレスで、それまで失っていた心の奥の感情を表出できるか否かは、アコールではとても重要視します。
ベビーブレスをやるときに感情が容易に出ないというのは、心にトラブルを有する人が、殆ど通過するところですが、感情が出ると、それまでの体の不調が消失してしまうことがよくあります。例えば、頭痛、メニエールのめまい、腰痛や肩こり、リューマチなどがビックリするほど消えてしまうことは良くあることです。
林 : 多くのクライアントは心身症(体の不調)を治すことが目的として来るのではありませんが、心の奥に溜めていた(気が付かなかった)感情を出したら、「そういえば(長い間苦しんでいた症状がいつの間にか)消えてしまった」と言うことはちょっちゅうあることですね。自分で心身症(体の不調)とは認識していなくて、後で「あれ(体の不調)はそうだったのか」と分かることが多い。自分の中に抑圧、抑制されている感情や感覚を出していくだけで、表面的な症状は消えていきます。もっとも、あなたはこういう症状を持っているのだから(ベビーブレスを)やりましょう、というのではない。今のアコールのアプローチは、あくまで心の奥に溜まっていて気が付かないものを吐き出しましょう、というのが特徴になっています。
雲泥 : 心身症でも神経症でも、同じようなことが言えて、(ベビーブレスで)感情を表出できる人は、改善が進んで行きます。心身症の人の場合は、ベビーブレスでの感情の表出がやや難しいということは言える。
林 : ない。また、本人は泣いている(感情が出ている)ことは自覚できても、何で(例えば過去のどんな事柄を思い出して)泣いているか分からないという場合が多いようです。しかし、感情を出したという体験があっただけでも(自覚はなくても)症状は消えていっている。そんな人が現在のクライアントでも何人も居ます。
ベビーブレスで自分(の心の奥の傷や悲しみ)を探って行ったら、泣き(感情の表出)とか(体の)硬直(一部でカーポペダル反応と呼ばれる)などの再体験(セラピーを重ねるとこの体験は古い体験の再体験であることが分かってくるものなので「再体験」と呼んでいる)をする。
雲泥 : たまたまアレキシシミアが神経症と心身症の関係を峻別する概念として使われているが、自分たちアコールとしては、全ての治療の大元として、感情を自分のものとして再体験ができるか、できるだけ古い時代、乳幼児期、胎児期の感情や感覚をもう一度味わって自分の感情が表出できるかと言うのが、治療の鍵になっている。そういう意味では、「アレキシシミア」という概念の上で治療を行っているようなものですね。
神経症であろうと境界例であろうと全て、アルキシシミアであることを突破できるかどうかが自分を取り戻せる鍵になっているというところが、自分たちのベビーブレスです。とても大きな成果を挙げています。アルキシシミアの突破がテーマになっているし、アプローチになっている。
林 : 親子問題でもアレキシシミアがポイントであって、母親自身が自分の寂しさや悲しみを体験したら、(それまで分からなかった)子供の気持ちが分かってくる。例えば、(クライアントが)子供を虐待している親だったら、(ベビーブレスでアレキシシミアを突破した後で)子供を殴ろうとした腕で子供を抱きしめてしまうと言う結果が出てしまう。自分の感情が分かったら子供との関係(親子関係)が努力無しに改善されていくと言うケースがよくある。
親子問題では、「母親として自信がない」と言うケースが良くある。それが、ベビーブレスで自分の過去をみて自分はどんな人間だったのか、どんな感情があったのか、ということを自覚し、認識することで改善する。いったい自分はどんな人間だったのか、昔どんな感情があったのかなど、ベビーブレスを行うたびに分かったことの一つづつのピースを集めて、パズルの全体が分かってきて、部分的な表出しかできなかった感情が繋がり、自分というものが実感できると、不思議に「自信」がついてくる。それを自分らしくいられるとか本当の自分と出会うとか表現している。
自分の過去の絡繰りが分かってきて、そしてアレキシシミアが解決してくると、自信がついてきて子供とゆったりいられたり、満足感が出たりすると言う結果が出てきます。
雲泥 : 書物によるとアレキシシミア(失感情症)と言う概念では、失ったエネルギーの行き場所が身体にあらわれてしまうというようなストーリーで心身症とアレキシシミアの説があるが、自分たちの見方はもう少し広い。
つまり、アレキシシミアつまり感情を体験できない(悲しみとか怒りとかの感情に直面できない)がゆえにアレキシシミアになっているが、直面できないエネルギーは当面の行き場を失うが消えるわけではないので、どこかに行ってしまう。その一つが心身化であり心身症や神経症の体の不調。もう一つは、親子関係で、例えば子供に行ってしまう。子供を自分の支配下に置き、取り込んで(象徴的な表現で言えば)喰ってしまう。そういう感じになって子供にエネルギーが向いてしまって子供の自由を奪ってしまう。その結果、子供が病気や非行など様々な問題をおこしてしまう。
そういう意味では、(概念の拡大化を恐れなければ)ほとんどのクライアントの問題は、アレキシシミア(失感情症)に全てが集約されてしまうような印象を持っている。
アレキシシミの先の方には、分裂(統合失調)もひかえていて、分裂している人達は、表面的には感情を持っているように見えても、本当の意味では感情を失っている印象がある。それは、その人の人生の非常に早期(例えば乳幼児期)に、悲しさ(あるいは憎悪や愛情などの感情)を表出することが過酷に妨げられ、そのために分裂して感情と直面することを免れ、避けている。表出できなかった感情に改めて直面し味わうことは大変な苦痛を味わうので、そうしないで過ごしていられるのは分裂のお陰ということになる。分裂という働き(防衛機制)は、もちろんアレキシシミアと言う概念には入らないのかもしれないけど、こちらから見ていると同じように見えるのです。人間的な感情が出ない、感情を自分のものにできない、再体験ができない、感情と直面できないということでは同じように見える。
林 : ベビーブレスの現場で毎日を過ごす立場として、心の奥に閉じ込められてきた悲しさ、憎悪、愛情などの感情は、同じ貯蔵場所に閉じ込めれているように感じます。このうち憎悪は言い換えれば「攻撃」です。
この「攻撃」に着目して「今日の心身症」( 出版)という本の55~56Pにかけて攻撃性の内向と病理との関係が書いてありますが、アコールでの見解と大変によく一致します。抜粋を書いてみます。
************ 抜粋 **********
不安及びうつと並んで、心身症の発症と経過に大きな影響を及ぼす情動は、怒りを中心とした攻撃性である。自分の思うとおりにならないフラストレーションが起こると、この種の怒り、攻撃性は高まる。また、自分の自己愛が傷ついたとき、あるいは愛する対象を失ったとき、うつや不安になるのと並行して怒りや攻撃性が高まる。
そして、これらの怒りの情動が内的なストレス因となり、怒りの情動が解消されない限り、本人は大変苦痛な心的状態に陥る。
そのとき、攻撃的な行動や言動を通してこれらの怒りを外に向かって解放するか、あるいは、内に向かって抑制・抑圧するか大きな課題になるが、これらの怒りー攻撃の情動に伴って、自律神経を介して種々の心身反応が起こる。また、この怒りを処理する手段として、種々身体的な障害を利用する場合がある。この意味で、このような心身症と深い関係のある攻撃性は、むしろ攻撃性を内向させることによって生じる、ある種の自己破壊性ないしは被虐性である。社会的適応を優先する結果、攻撃や怒りの情動は解離されてアレキシシミアの状態になり身体化される。
さらに、内的な空想や考え、願望などに対して厳しい罪悪感が起こり、それに伴って、内向した攻撃性が高まり、身体化されやすいパーソナリティの持ち主がいる。
このような心身症を起こしやすいパーソナリティの素因形成の一因として、幼児期の母子関係について、次のような仮説が一般的に共有されている。
幼い子どもに対して、母親はその子供が自分から分離して、自立していくことに不安を抱き、むしろ絶えず自分の支配下に置こうとする。したがって、子どもが自立する方向に向かうと攻撃的になる。ところが、子どもが不安になって、母親に依存し、とくに身体的な病気や障害をあらわすと、過剰な愛情を向け、保護し、溺愛する。この母子関係が内在化すると、子どもは自立の方向に向かうと不安が高まり、内在化した母親像からの攻撃を体験する。この攻撃性は自分に向き、身体化される。身体化を起こすと、母親に許され、愛される体験が起こる。
このような内的な対象関係のパターンが、母子関係によってつくり上げられるパーソナリティの持ち主が、心身症を起こしやすいと言う。
このような意味で、心身症治療の大きな課題は、その患者の怒り、攻撃性を情緒的に改めて体験し直し、更に言語化し、洞察することを助けるにある。しかし、この治療過程をたどるためには、本人自身の自我の防衛機制や対象関係が総合的に理解されねばならない。
とくに、最近の摂食障害の患者などで、境界パーソナリティ障害と呼ばれるパーソナリティ障害をもつ人々にも、攻撃性の処理の困難さが指摘される。彼らは、対人関係において容易に傷つき、怒りを向け、そのために安定した対人関係を持つことができない。また、これらの攻撃性、怒りが容易に自分に向いて、自殺、自傷行動に走ったり、このような怒りの苦痛から逃避するために薬物に依存したりする。さらに、これらの攻撃性を身体化して、各科を訪れる。
********* 抜粋 以上 *************
雲泥 : 前段の部分は、単にエネルギーとしての感情ではなく、感情の中の「攻撃性」に着目した説明で、分かりやすいです。中段は、アレキシシミアが母子関係で作られる仕組みについて言及してあり、納得します。このような母親もカウンセリングするとご自身がアレキシシミアであることも多く、母から子への伝達がなされる説明にもなっていて、分かりやすいです。後段では摂食障害についても「攻撃性」との関係を指摘していて、興味深いです。
林 : 特に中段の部分は、アコールの最近のあるクライアントがベビーブレスやカウンセリングを通して自覚した内容と、うまく一致するようです。クライアントである母親が、幼い子供に対して、表面の愛情の名のもとにおこなう支配。その陰には、子供が自分(母親)から独立しようとする事に対する不安がある。そして子供は、表面的な愛情であっても、その愛情に依存して自分を抑え、身体化して病気になっていく。病気になると母親からさらに(欲しかった、しかし本物とはいえない)愛情が貰える。そして子供は逃げていくことができなくなる。
雲泥 : 以上、
1. アダルトチルドレンと共依存
2. 心身症とアレキシシミア
3. 母親としての問題(対子供に対する問題)
の3つの問題はすべて広い意味でアレキシシミア(失感情症)を突破することで、改善が期待できる。つまり、ベビーブレスを通して感情を吐き出すことに成功し、自分の本当の感情を取り戻すということで、自分自身を取り戻すことができる問題として扱うことができる。そのような観点から見れば、3つとも同じ共通の問題に過ぎない。
感情を失う、それは傷の痛みを失うことである。一面では、痛みを味わなくて済むことである。しかし他の面では、人間性を、自分自身を、無くすことにつながる。
自分自身を取り戻すために、ベビーブレスでは傷を再体験し、傷の痛みをもう一度味わう。小さい時に味わったであろう不安、恐怖、つまり傷の痛みをもう一度、再体験して受け入れていく。このことは、とても困難な仕事だけれども、もの凄く意味があり、効果がある。
〔今日の心身症治療〕小此木啓吾・末松弘行編 金剛出版 7ページ 9ページ参照 表1表2 心身医学的な配慮がとくに必要な疾患(いわゆる心身症とその周辺疾患)
1. 呼吸器系
気管支喘息(cough variant asathmaを含む)、過換気症候群、*神経性咳 、喉頭痙攣、 慢性閉塞肺疾患など
2. 循環器系
本態性高血圧症、本態性低血圧症、起立性低血圧症、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)、 一部の不整脈、*神経循環無力症、リイノー症など
3. 消化器系
胃・十二指腸潰瘍、急性胃粘膜病変(AGML)、慢性胃炎、過敏症腸症候群、潰瘍性大 腸炎、胆道ジスキネジー、慢性肝炎、慢性膵炎、心因性嘔吐、*反すう、びまん性食道 痙攣、食堂アカラシア、*呑気症(空気 下症)およびガス貯蔵症候群、*発作性非ガ ス性腹部膨満症など
4. 内分泌・代謝系
神経性食欲不振症、(神経性)過食症、Pseudo・Barter症候群、愛情遮断性小人症、甲 状腺機能亢進症、心因性多食症、単純性肥満症、糖尿病、腎性糖尿、反応性低血糖など
5. 神経・筋肉系
筋収縮性頭痛、片頭痛、*その他の慢性疼痛、痙性斜頸、書痙、眼瞼痙攣、*自律神経 失調症、*めまい、*冷え性、*しびれ感、*異常知覚、*運動麻痺、*失位失歩、 *失声、味覚脱失、舌の異常運動、振戦、チック、舞踏病様運動、ジストニア、*失神 *痙攣など
6. 小児科領域
ミルク嫌い、起立性調節障害
7. 皮膚科領域
慢性じん麻疹、円形脱毛症
8. 外科領域
頻回手術症、腹部手術後愁訴(いわゆる腸管癒着症)
9. 整形外科領域
腰痛症、頚腕症候群
10. 泌尿・生殖器系
神経性頻尿、心因性インポテンス
11. 産婦人科領域
更年期障害、月経異常
12. 眼科領域
原発生緑内障、眼精疲労
13. 耳鼻咽喉科領域
メニエール病、咽喉頭部異常感症
14. 歯科、口腔外科領域
特発生舌痛症、義歯不適応症
*一過性の心身反応、発達の未分化による身体症状(反応)、及び神経症の場合も含まれる。
いわゆる心身症は、ヒステリーの転換症状、機能性障害(器官神経症)、気質障害(狭義の心身症)に大別される。狭義の心身症としてはおもに以下の疾患を挙げることができる。循環器系:本態生高血圧症、本態生低血圧症、レイノー病、冠動脈疾患、不整脈/ 呼吸器系:気管支喘息、過換気症候群/消化器系:消化性潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸性症候群、潰瘍性大腸炎、慢性膵炎、慢性肝炎 /内分泌系:糖尿病、甲状腺機能亢進症、神経性食欲不振 /神経系:偏頭痛、筋緊張性頭痛、自律神経失調症 /骨筋内系:慢性関節リウマチ、痙性斜 /皮膚科領域:アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、慢性じん麻疹、湿疹、尋常性・・、/耳鼻咽喉科領域:メニエール症候群、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎 /眼科領域:原発性緑内障 /産婦人科領域:月経困難症、月経前緊張症、無月経、月経異常、機能性子宮出血、不妊症、更年期障害 /小児科領域:小児喘息、起立性調節障害、心因性発熱/手術後;ダンピング症候?口腔領域:口内炎等々。
p11 心身医学的な治療法
1. 一般内科ないし臨床各科の身体療法
2. 生活指導
3. 面接による(一般)心理療法*
4. カウンセリング*
5. 薬物療法(向精神薬、漢方など)
6. ソーシャル・ケースワーク
7. 催眠療法*
8. 自律訓練法*
9. 自己調整法
10. 筋弛緩法
11. 〔簡便型〕精神分析療法*
12. 〔標準型〕精神分析療法
13. 交流分析*
14. 行動療法*
15. バイオフィードバック療法*
16. 認知療法
17. 家族療法
18. 作業療法〔絵画療法を含む〕
19. 遊技療法
20. 箱庭療法
21. 音楽療法
22. 読書療法
23. 集団療法
24. ゲシュタルト療法*
25. 生体エネルギー療法*
26. ロゴセラピー
27. バリント療法
28. 断食療法*
29. 森田療法
30. 内観療法
31. 鍼灸療法
32. ヨーガ療法
33. 禅的療法
34. 気功法
35. 神経ブロック療法
36. 温泉療法
注 *印は心身医学療法として保険で認められているもの