ケース研究
アコールのカウンセラーによるメッセージ、ケース研究や活動記事です。小冊子に投稿した記事を対談形式に転載しています。
アコールのカウンセラーによるメッセージ、ケース研究や活動記事です。小冊子に投稿した記事を対談形式に転載しています。
雲泥 : 人間関係に悩んだり、自分自身の不全感に悩んだりする人は、心の奥に心理的、精神的なトラブルを持っていることが多いわけですが、ベビーブレスやライフリーディングを通して分かることは、そのようなトラブルの根っこには、どうも乳幼児期、さらに深くには胎児期の傷(トラウマ)の問題があるようだ、ということです。特に胎児期の問題は、影響も大きいし、意識に登らせる過程で辛さが伴います。この過程に癒しを得られないか、というのがフローティングセラピー導入の大きな理由のひとつでした。
ところが、本格的に導入してみると、別のことも分かってきました。
林 : そうです。2001年の夏にはフローティングセラピーの実績が延べ50人を越え、かなりの具体的なデータが手に入り、いろいろのことが分かってきましたね。
雲泥 : 簡単に言うと、癒しと傷の再体験という二つの要素がからんで来ます。 まず、癒しという点からみると、胎児期というのは、人生の一番はじめに何のストレスもなく、完全に平穏で、無条件で満たされていたある時期の経験として、大人になった人間の生存活動を無意識の根底から支えています。禅僧などは悟りを求めて修行をするようですが、体験したこともないはずの悟りが存在すると確信するのは、この胎児期に心理的な根拠があると、何かで聞いたことがあります。
胎児期の状態が良かった人は、仮に乳幼児期以後に傷があっても、「フローティングセラピーはとても気分がいい」という印象を持ちます。
他方で、傷の再体験という点からは、胎児期の状態が悪く傷(トラウマ)を形成している人は、「気分が悪い」ということにもなります。ところが気分が悪いにもかかわらず、効果は深く、その後に改善が起きるし、しかも、なぜ改善が起きたのか分からないほどです。深い無意識の部分で癒しが起きていると言っていいとおもいます。ある有識者はその効果が「精神病のレベルだ」と言いました。
この胎児期の再体験も、他の乳幼児期の再体験と同じように、時間が経って受け入れが進むと、変化し、改善していくようです。
林 : 二つの要素があると言いましたが、その通りだと思います。そして、胎児期の傷を再体験した人は、その後のベビーブレス(フローティングセラピーとベビーブレスを併せて実施することが多い)では、その傷を吐き出すことができ、結果的にベビーブレス深く入れることが多いようです。フローティングセラピーでただ、ぷかーりと浮かんでリラックスしていただけなのに、気分が悪くなるなんて「(自分の中には)何かあるぞ」と手がかりをつかみ、その気分の悪さを、ベビーブレスで何とか吐き出そうとします。
その意味で、フローティングセラピーには三番目の要素があると思います。癒しとまでは行かないまでも、深いリラックスが手に入って、その後のベビーブレスや自己洞察がうまく行くという点です。フローティングセラピーの直後に、濡れた身体のまま自分の深い内面(それまでのカウンセリングでは出てこなかった)を語りはじめて、その自己洞察にこちらがびっくりさせられることは何度もあります。
他方で、胎児期の状態が良く、癒しが起き安心が手に入った人は、もちろん、その後のベビーブレスには安心して深くはいります。
ですから、フローティングセラピーの結果、気分が「いい」人も「悪い」人も、少なくともベビーブレスを補完するものとして、非常に役立つことは分かってきました。
雲泥 : そういうことですね。
胎児期の状態が悪く、そのためなかなかベビーブレスには入れなくて、しかし、フローティングセラピーで気分が「悪い」経験をして「何かあるぞ」と手がかりを得て、結果、ベビーブレスに深く入ることになる人たちのことをもう少し話して下さい。
雲泥 : ぷかーりと浮くと自分に深くは入れるのはなぜか、ということをもう少し・・感覚的に・・。
林 : そうですか。フローティングセラピーでは、体温と同じ程度のお湯にに浮かびますが、身体の力を抜き、身体を放り出すようにしないとうまく浮かびません。普段なかなかリラックスできない性格の人でも、浮かぶために必ずリラックスします。
雲泥 : うまく浮かばないとおぼれますからね。
林 : この身体的なリラックッスを長い時間続けます。1時間から3時間くらいでしょうか。お湯の存在も感じませんし、(フローティングセラピーの湯船の中は)快適な環境です。そして、いくらか安心するのだと思います。そのうち、思考が止まる傾向になり、心的な防御が外れます。深い禅の心境と同じなのかもしれません。そして、同じように浮かんでいた胎児期の深い無意識に出会います。一方のグループの人達は「安心や癒し」に出会うでしょうが、他方のグループの人達は「恐怖や不安」に出会うでしょう。
雲泥 : フローティングセラピーを重ねることで、一方から他方のグループへ、またはその逆へ変化する人もいますね。また、その出会い自体も無意識なので、「安心や癒し」は単に「気分いい」という認識ですし、「恐怖や不安」は単に「気分悪い」という認識になるのですね。
林 : そうです。強調しておきたいのは、単に「気分悪い」という認識であっても、自分の中には何かあるぞ、という手がかりをつかみ、その気分の悪さを、ベビーブレスで何とか吐き出すことにつながり、大きく前進します。
雲泥 表面的には気持が悪い人も、深くリラックスして何かしら安心したので次のステップに進んだ、ということでしょうか。
林 : そう感じます。
雲泥 : リラックスすることで、「恐怖や不安」が奥にあると思われる「気分の悪さ」があらわれ、次のステップに進んでいくというのを見ると、人間の自然治癒力を思います。リラックスやある程度の安心などが得られれば、傷(恐怖や不安)を再体験する現象がひとりでに生じ、そしていい結果に向かっていくのですから。
さて、理屈ばかりでもつまらないので、実際のフローティングセラピーの例を何人か、簡単にですが、見ていきたいと思います。林さん、はじめは「気分いい」グループの人達を少し、後で「気分悪い」グループの人達をお願いします。
林 : 全部で7つの例を紹介します。1番目の人は、会社では管理職を勤める男性です。「気分いい」グループの人です。
聞き取り等のメモ「浮かんだまま2時間眠りました。哺乳瓶でミルクを飲みました(退行や癒しを促進するために、クライアントの希望により行っています)。すぐに眠れた。眠る前腕やところどころが痙攣していた。音(音楽のこと)はかすかに聞こえる。自分の心臓の音がよく聞こえた。時たま眠りが浅くなると手足の感覚がない。気分良い。ミルクが体に入っていくのが山から裾野に伝わっていくように感じる。離したら僕の生命線がなくなると思った(ミルクを長い間飲む)。」
フローティングセラピー後の彼の感じは、穏やかな感じでした。彼は管理職で部下からと上司からの挟み撃ちで苦しんでいましたが、フローティングセラピーセラではただただ安心した経験が出てきました。
その後の本人からの感想は、仕事で、人の(心理的な)ことがよく分かるようになり、自分も楽になり、何か全体が観えるようになった。頑張らなくなり、それでも(仕事の)能率が上がるようになった。それまで仕事人間だったので、子供に「お父さんは最近仕事としているの?」といわれる、と。
雲泥 : 家庭でもリラックスしている、ということですね。
林 : (仕事の)周りの人からも「変わった」と言われるようです。本人がいうには、何かホワーンとした感じが続き、それでも(仕事で)見るべきところは見ているし、(部下などに)言うべきことは言っている。それまで文句を言っていた部下も、あまり文句を言わずにいうことを聞いてくれるようになった。
雲泥 : 望ましい変化が早く起きてきたというケースですね。しかし「離したら僕の生命線がなくなる」というのは、どういうことだったのですか。
林 : お母さんにオッパイを拒否されたことがある、ということを想い出したのです。
雲泥 : その問題に多分、将来彼は向かっていくのでしょうね。
林 既にやりました。その後のベビーブレスでは、そこが出てきました。
えーー、次、2番目の人は、中間管理職の男性で、仕事や人間関係に行き詰まりを感じ、疲れた状態でやってきてくれました。フローティングセラピーをとても気に入ってくれ「これはいい、霞がきれていく感じがする」と言ってくれました。「気分いい」グループの人です。
聞き取り等メモ「2時間25分浮かんでいました。カウンセリングなし。ベビーブレスなし。気分よかった。これはいい。守られている感じがする。手のひらの中で自由に過ごせている感じ。鼓動が聞こえる。目が覚めたとき体を動かしたくてしょうがない。母が(お前はお腹の中でいつも)蹴飛ばしていた、と言っていたがそうだったのか。気分よかった。自由な感じ。」
雲泥 : 気分の良さが伝わってきますね。
林 : 3番目の人も、「気分いい」グループの人です。彼女もベビーブレスを長い間続けている人で、感受性も高くなり、人との関係で傷つけられ、自分の感情を抑え込んだために腰を痛めたので、何とかリラックスしたいということでした。
聞き取り等のメモ「腰が痛くて急きょフロセラ希望で来る。1時間50分、寝ていた。音が大きく感じた。自分は寝ている感じはない。(お湯の中で)立てに揺れたとき洞窟を移動している感じだった。途中遊んでいる感じが楽しかった。指で遊んだり、指を口の中にいれたら安心した。目が開いて様子を見てまた眠った。出てから林に抱かれたときファーッと温かかった。オレンジ色だった。今温かい。水と言うよりお湯でもなく不思議な温度感。顔を触って遊んだ。楽しかった。居心地良かった。最後の方はお腹がすいた。今朝の歯の浮いている感じがなくなった。終わりに声を出したが、いつもと出し方が違った。大きい声を出しているつもりだった。」
彼女はこのあと実際に腰痛は良くなっています。
雲泥 : 彼女はベビーブレスでも自由に感覚的にやれる人で、遊びやおしゃぶりなどもできて、容易に退行を起こして癒しを手に入れやすいですね。
林 : 4番目の人は、教育関係の長を勤める人です。日頃の仕事の疲れは大変なものがあることは、私も昔、教師をしていましたから、よく分かります。特に、長を勤める人のストレスはすごいと思います。
聞き取りなどのメモ「1時間浮いていました。体が水の中に浮いたがすぐに寝たように思う。目が覚めたら曼陀羅が見えた。(それを)探していたら、体が固くなった。抜いてみようかと何も考えないようにジッとしていたら、体がフワーッと空の上に引っ張られているようだった。気分よく動いていた。耳に水がはいってキンキンしたので気になって上がった。あとまだ1時間くらい入れたはずと思う。体が浮くので、起きるのが億劫になる。」
雲泥 : ユング派では、治療を重ねてやがて曼陀羅が見えると治る、ということが言われていると本で読んだことがありますが、この人はユングの知識があるのでしょうか。
林 : いえ、聞いていません。
次の5番目の人は、「気分いい」から「気分悪い」に変化していった人です。長年ブレスをしている年輩の女性です。3回フローティングセラピーを受けました。
聞き取り等のメモ
1回目「思考が止まる。胎児は(感覚などを)受けるだけなら傷つくだろう。完全にはねないで、どこかでは意識があった。何も考えない。気分よかった。」彼女はその後、「その日(の夜)は眠れた」そうです。
2回目「(湯船の中で)気分よく寝た。1時間半から2時間くらい寝た。寒くて気が付いた。気分良かった。何もないところにいた。」
3回目「1時間半くらい、多分寝たと思う。急に恐いという思いが出た。急に出産に行った恐怖のようだった。恐い思いしたからか、その後のブレスは出産するところの恐いところに入れた。」
彼女はベビーブレスなどを長い間続けていて、ある程度理解が鋭くなっているので、自分の思考が止まるところに気が付いたり、胎児が傷付きやすいであろうという感想を持ったのだろうと思います。
また、彼女は胎生7ヶ月の早産で産まれていますから、「急に出産に行った恐怖のようだった」というのは、そうなんだろうと思われます。
雲泥 : うーん。彼女の経験は、私自身のフローティングセラピーの体験ととてもよく似ています。
林 : 雲泥さんも予定より2ヶ月早く産まれていますからね。彼女がブレスを重ね、自分の自然治癒力が高まり、早産の再体験を許している感じがしますね。
雲泥 : そうですね。
林 : 6番目の女性も敏感な人です。ブレスも複数回行っています。どちらかというと「気分悪い」グループの人です。2時間浮かんでいました。
聞き取りなどのメモ「照明が明るすぎる。音(音楽)がない方が良い。眠っていた。夢見た。尚枝(林さんの娘さん)が独りぼっちになる夢だった。林に捨てらる夢だ(この女性は直前に、中二の尚枝さんが外国にホームステイする予定だ、という話を聞いている)。急に存在がなくなる。恐怖がでた。ハッと飲み込む。瞬間にいなくなる。落ちる感じ。沈む感じ。夜寝ていても夢で落ちる感じはあるが、その感じに似ている。最後、起きたいような寝ていたいような気分。気分悪いと、気分良いが同居している感じ。胎内の気分ちいい感じではないのに浸っていたい感じ。母は、妊娠4ヶ月の時に子宮筋腫を手術で取った。その時に、おろすかおろさないかで、よく悩んだらしい。男かも知れないから(それなら産んでもいいなと思って)生んだといわれた。(このフローティングセラピーで本当に)そんな感じだと分かる。」
雲泥 : 彼女自身の不安が、尚枝ちゃんの話に材料を得て、脳裏に浮かんできたのだと思います。夢と同じですね。
林 : 胎生4ヶ月のときに味わったであろう死の可能性は、まさに胎児期の傷を形成したでしょうが、その傷が「 瞬間にいなくなる」「落ちる」という感じで表現されるのでしょう。そして、彼女はその後にベビーブレスをしましたが、「子供(自分自身)を刺す(殺す)」体験をしました。
雲泥 : 胎児期の傷によって形成される殺意は、対象を持ち得ないですから、自分に向かうことにもなります。
林 : 彼女は自分自身を殺すという新しいステップに進んだだけでなく、ベビーブレスの体験を受け入れるようになったことが感じられます。
雲泥 : そこのところを具体的に話して下さい。
林 : 彼女はもともと感性がいいところがあって、ベビーブレスはうまく入れる人でしたが、深く入った結果出てきた不安や恐怖に悪戦苦闘して、なかなか受け入れられない状態でした。ところが、今回のベビーブレスでは、自分自身を殺すというとても深い体験をしながら、受け入れる感じが出てきました。
例えば、彼女は、その次の日にメールをくれましたが、自分の傷を避けずに、傷と一緒にいられるようになったように感じます。
「昨日はご心配をおかけしました。昨晩は暑くて、寝れなかった。体はどうもないのだけど、首から上が熱かった。今から思うと、胎児風呂とおんなじですね。今日はフワーと風に漂っている感じです。本当にさみしい。でもそんなに嫌な感じでない感じ。ひとりなんだけど限りなく優しい気持ちです。私がいきているから、あの胎児も生きている・・・・・、それを感じているのかな、暖かいというのではなくて、お互いに別々にひとりとして存在している本当にひとりとして・・・・、その愛しさなのかな。暫くこの感情に浸っています。」
雲泥 : 彼女のように深い傷を持つ人が、その傷から逃げずに、一人で立っていられるような雰囲気になるということは、とても感動的なことですね。
林 : そうでなんですよ。
7番目は、親子によるフローティングセラピーです。フランスのアンマリーさんがやっている療法ですが、自分達もフローティングセラピーを導入する際に、是非やってみたいと思っていた療法です。
雲泥 : 世代間伝達の話は何度もしましたが、ここで簡単に説明します。親に心の傷があると、子供にもその傷がそのまま伝わってしまう現象をいいます。例えば、乳幼児期や胎児期に傷がある親は、自分が妊娠した胎児や、育てている乳幼児を本当にはかわいく思えません。かわいいと思う振りをしても無駄です。その否定的な思いは、乳幼児や胎児に、特有なとびきり敏感な感覚によって「分かって」しまいます。「自分は本当には愛されていないようだ」ということになります。その結果、乳幼児や胎児は心に傷を得ます。このようにして、親から子へ、子から孫へと伝わります。
この世代間伝達を断ち切るには、世代間伝達についての理解の進んだ母親によって、子供を胎児期から育て直すのが一番ですが、フローティングセラピーによって、擬似的ながら、そのことがある程度実現可能になります。
林 : 親子によるフローティングセラピーは既に何例か行っていますが、この例は、子供の反応が興味深いです。
母親は、はじめ子供をかわいく思えず、つい叩いてしまうということが悩みでした。ベビーブレスなどで子供との関係が改善され、子供もそのこと(母親の感じが変化していっていること)はもちろん感じていますので、フローティングセラピーがどんなものかは分からないまでも、母が誘うと子供は「フローティングセラピーやりたい」と応じ、楽しみに待ちました。でも、本当の反応は違ったのです。子供の傷は、思いのほか、深かったのです。
母親は合計3回行っています。1回目のあと、1ヶ月ほどして親子でおこない、直後に自分一人でおこないました。1回目は、ブレスのあとに行い効果が身体にあらわれています。
聞き取り等メモ 1回目「ブレス後すぐに入る。2時間浮いていた。ぐっすり眠る。始め恐かった。感覚が恐かった。きっとお腹の中の感じだろうと思う。真っ暗な感じ。お腹の中だけど居心地が良くない。恐い感じ。ジーッといて嫌な感じ。きっとお腹の中でもいい気分でなかったんだと思う。「なんだこの感じは」とおもっいる内に眠ってしまった。胃腸がスッキリした。背中がスッキリした。肩こりもない。凝っていたものが取れた。始め首が痛かった(首が悪い)。首のせいで力が抜けない。首は違和感がある。水に浮いている感じがしない。揺れると水だと分かる。布団に寝ている感じ。今足まで温かい。頭がすっきりしてスースーする。毒素が出たような感じ。ニキビみたいなものがとれたよう。癒されたという感覚がある。安心感。」
1ヶ月後、2回目「親子で11時35分からスタート。子供は熊のぷーさんの浮き具を機嫌良く着て、胎児風呂を楽しみにしていたが、いざ入ろうとママが裸で先に入っていると嫌がる。泣き続ける。怖いと言う。「上がりたい」と言い続ける。「怖いよー」ママが「怖かったのね、ごめんね、大丈夫だよ」「上がりたいんだもの」「怖かったね、ごめんね、いっぱい泣いて良いよ」。12時15分くらいで静かになる。眠っては起きてまた泣く。ぐずっているような甘えているような泣き方。12時50分に終了。フロセラから上がってから機嫌が良い。(迎えにきていた)パパに会う。哺乳ビンの牛乳を飲む。「お風呂に入って怖かった」と言う。機嫌いい。ウンチをする(パパが一緒)。
以下、母親からの話。子供は、「怖い」と泣いて目が真剣だった。「隠れたい」と言った。胎児の時は職場で対立していたり、母親と喧嘩していたので、胎教は悪かったと思う。(この子はもともと)広い野球場での声も怖がるし、サンリオのパレードも怖い。自分(母親)も何か怖い感じがある。(親子で)同じだと思う。子供が泣いているとき、泣いている気持ちが分かった。生まれたときそうして上げたかった(分かってあげたかった)。産後は(考えるのは)自分のことだけだった。(子供が)可哀想だった。気持ちが分かって育てられたら良かったのに。
妊娠中に流れたら(流産したら)どうしようと言う心配があった。仕事もやらなくちゃ。妊娠中は幸せな感じとよく言われるが、どこが幸せかと思っていた。(子供の立場になると)ちゃんと育てて貰えるか怖かったと思う。可哀想。」
雲泥 : 子供も、まさか自分の中に恐怖が隠れているなどとは感じなかったんでしょうね。
林 : はじめ子供は、フロセラの湯船を見ても「わーいプールだ、プールだ」といってはしゃいでいたのに、先に湯船に入った母親が「さーおいで」と言った途端にビビッてしまったんです。それから、泣いた、泣いた。40分間泣きっぱなし。 それでも、この母親が偉かったんです。親子のフロセラでは、子供よりも、母親がセラピーに耐えれなくなるのを恐れます。耐えられなくなって子供をしかるようなことがあれば、子供は二重の傷を負う可能性が出てきます。だから、子供が泣きやまない様子を見て、私は本心は迷いました、いつ、中止すべきか。
雲泥 : そうですね。母親にも傷がありますから、子供が傷丸出しでビービー泣いたら、それがそのまま母親の傷に触れて、怒りを呼び起こしたり、そこまで行かなくても子供への否定的な感情を呼び起こしたりすれば、子供は敏感に感じますからね。まして、子供も退行している最中ですから、余計に大事になりかねませんよね。
林 : ところが、母親の様子が、私の中止を踏みとどまらせたんです。フロセラの中の様子を音声モニターでジーッと聞いていると、母親は実にみごとでした。「不安だったんだねー」「ごめんねー」「ごめんねー」と、ずーとやっていました。誠実さが伝わってくるようでした。
そうするうちに、子供は眠りはじめたんです。起きてはぐずり、また眠り。たぶん胎児の頃の感じか、あるいは新生児の頃の感じではないかと想像します。
雲泥 : まさに、癒しが起きている状況ですね。
林 : そしたら、フロセラから出てきたときの元気なこと!。パパと帰りながら、「もう(フロセラは)やらない!」って。ところが、その直後に母親がフロセラをやっているのを見て、にっこり。その笑顔のいいこと。私が「ママが赤ちゃんになってから帰るからね」というと、その時のその子の雰囲気が・・・、全ー部知っているという感じなんです!。まるで「ママをよろしく」とでも言うような。数日後にその子と電話でまた話したんですが、「またやる!。胎児風呂やる!」。
雲泥 : 子供は分かるんですね。
林 : その母親の3回目「母親は、子供がでてから一人で続ける。1時から2時半まで。うつらうつら眠った。気分ちよかった。前(1回目)は少し怖かったが、今は怖くない。眠れないと思っていたが、力を抜くと眠れた。前は首と頭が痛くて、治療にいくほどだったのに。」
その後、母親はベビーブレスをおこなったが、前回のベビーブレスより怒りを出すことができました。
雲泥 : 進んでいく感じですね。
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