役に立たなければいらない1/3|早く消えてしまいたい|アコールセラピーの現場から(711)

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今回はある女性の話です。彼女も抜けていきましたね。
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ほんとにうれしいです。とても魅力的な女性になりました。
彼女は、初めは周りばかりが気になり、笑顔で居ないと嫌われると思っていました。
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問題を忘れないように、ニコニコ仮面という名前を付けてもらいました。
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後で話題になりますが、ニコニコ仮面の裏には、「早く消えてしまいたい」というような辛い心境が隠れていました。
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では、その種明かしを、彼女の絵と記録(以下「 」書きの部分)にしてもらいましょう。彼女が描いた絵を見てきましょう。

絵1
<我慢してニコニコ仮面>
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絵1は彼女の当初の不全感を表したものです。上のほうには、①「何も言わせない」「世間の目」から見られ「怖がって遠慮している私」がいて、②誰かに「守って」「助けて」と訴えますが、③④ 父という壁や母の呪縛があって苦しみます。
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絵1の中の「エ エ」は人の目ですね。いくつかのシンプルな人型は彼女自身でしょうか。
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はい。もっとも、その中の3つ目の人型は母親かもしれません・・・。
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この時代は母親と自分の区別があいまいなのかもしれません。
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彼女自身の説明です。「我慢する。周りにばかり気にする。笑顔で居ないと嫌われると思う。ニコニコ仮面をしていないといられない。寂しいということを自覚するのが怖い。」
「環境は悪かったと思う。親は笑っていない。自分は笑っていた。贅沢はいらないから明るくいたいと思っていた。ご機嫌を伺っていた。」と説明します。
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今だから「ご機嫌を伺って」などと言えますが当時は大変だったことでしょう。

絵2
<役に立たなくてごめんなさい>
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母という呪縛は、母からの怨みツラミを聞かされてつくられます。絵2には、右上の母親が、左下の彼女に向かって、怨みツラミを放っています。
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小さな彼女が、黄色の丸いバリアで自分を守っている様子は、痛々しいです。
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母親と父方の祖母(おばあちゃん)には確執があり、彼女はその板挟みになります。
彼女は言います「子供の時は、母は「早く死にたい」と言っていた。愚痴を言っていた。「あんたはおばあちゃんに可愛がられていいわよね」」と。小さな彼女は「役に立たなくてごめんなさい」と思うしかありませんでした。
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そもそも母親に「早く死にたい」があったわけですね。
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世代間伝達が暗示されます。

絵3
<役に立たないならいらない>
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この絵(絵3)は絵2をさらに詳しく描いたものですね。自分の気持ちを言ってはいけないと、押し殺し、閉じ込めています。
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母から怨みツラミの中には、お母さん自身が「死にたい」と言うことと、お母さんのヒステリックが多く含まれていました。
彼女は「お母さんがかわいそう。お母さんごめんなさい。役に立たなければ(自分は)いらない」と思います。
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そうなんですね。小さな子供(彼女)は、母の気持ちを自分の気持ちとして受け入れます。ある意味では母と自分の区別がつきません。絵を見ると、彼女は、怨みツラミを放つ母親を抱きかかえています。
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他方では、後で思い起こすと、「自分の気持ちを言ってはいけない、押し殺していた」と言います。また、「小学生の時に母親に「もう殺して」と言った覚えがある。生きている心地がしなかったと思う。家(うち)は何で(こんな辛い雰囲気なんだ)という話をしていたと思う。「お母さん死んで」じゃなくて、「私を殺して」だった。・・・言った自分が申し訳ないと思った。困らせたと。今なら(母親は)子供にそんなことを言わせるなよと思う。」と言います。
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「言わせるなよ」というのは自分が回復してきたから、自分自身が出てきたから、言えることですね。
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自我がしっかりしてきた。
でもそのころは、自分というもの(自我)は頼りなく、母親にしがみつくしかなかった。
彼女は言います。「漠然と母の殺意が怖いというのがあって、(母に)凄くしがみ付いている。小さくて怖くて泣いていて。私に取って母の殺意は「役に立たないならいらない」だった。「いらない」ってやられるのが怖くてしがみ付いていた。」と。
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この「役に立たないならいらない」というのは大きかったですね。長い間彼女を支配していた大きなものです。そのことに彼女は気が付き、カウンセリングのたびに自分のテーマにしていました。彼女の中がずんずん進んでいったような記憶があります。
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大人になり彼女自身も、そのことの加害者になったという事件があります。ある時お付き合いしていた人との結婚を望んでいました。妊娠しましたが、その人は結婚に同意しませんでした。彼女は堕胎しました。結婚という目的に役に立たない子供を堕胎したんだと、彼女は言います。同じことをしてしまったと。
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彼女はそれまでにも増して真剣になりました。進んでいきました。

(続く)

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