役に立たなければいらない2/3|役に立っても立たなくても最初からいらない|アコールセラピーの現場から(712)

(続き)2/3


絵4
<生まれて初めて怒りを出した><早く消えてしまいたい自分がいたのだろう>
<H>
彼女の不全感(絵1)がどこからくるのかという謎解きは、母親との関係で進みます(絵2、絵3)が、さらに、母親を含む家族との関係で、幅広く進んでいきます(絵4)。
<W>
家族との関係で母親を理解するという側面もあります。
<H>
この絵4では、幼い彼女が、家の階段の途中に座り込んで泣いています。一階には祖母と父が生活し、二階には母と妹が生活します。そして家族は一階と二階に分かれて確執があり、その中心は、母親とおばあちゃんの確執です。その確執の調整役として彼女は苦しみます。
<W>
一階にいる6つの顔に比べ、二階にいる二つの顔は、悲しそうです。彼女も泣いています。
<H>
彼女は言います。「小さい頃(小学校低学年)親戚が集まる時(お正月など)父が長男なので複数の弟(叔父さん達)が家族を連れて来た。私達、母と妹は二階に住んでいた。一階でみんな食べているのを階段のところから私は見ていた。母は二階にいるし、私が一階には行っては行けない雰囲気だった。いつも、誰かが来ると母は、表には出なかった。祖母は表で母の文句を言っていた。」
<W>
一階に行けないけれど二階にも居ない。階段の途中です。調整役だったんですね。
<H>
そんな状況下で、お母さんは、何とか彼女を利用して父の家の実質的な一員として迎え入れられたかった。
彼女は言う。彼女の不全感の原因は「父でも祖母でもなく、母だなと思う。母は生きるために私を産んだなと思う。」彼女が生まれる前、母親は父親と「2,3年別居していたよう。でもどうしてもお父さんのところに戻りたくて、母親の親に頭を下げてもらって父方の家に戻してもらった。ちょっとして生まれたのが私だった。母は自分が生きるために産んだのではないかと・・・考えたら涙が止まらない。何か繋がる感じだった。・・・いつも子供の頃思ったのは母親にしがみ付かれる思いだった。(そのころ)子供らしくいられないのは、(不自然にニコニコと)笑顔でいたのは、「お母さん大丈夫かな」と思っていたから。(お母さんを)助けないといけないと思う。」
<W>
命をかけての調整役を強いられた・・・。
<H>
母親にしてみれば、あなたの家の子供(彼女)を産んだので、私をあなたの家の一員にしてください、ということです。
彼女は続けます。「(大人になった現在の)仕事も「責任感」とか、「どうにかしなくちゃ」、「見てみぬ振りは出来ぬ」というようなのがあるが、それ(母親に対する気持ち)と繋がるのか。」と彼女は推測する。
<W>
「役に立たないならいらない」で仕事も頑張るということですね。辛いです。楽しくないですね。
<H>
このように謎解きが進んで、彼女は怒りを出せるようになった。「・・・ブレスをして、怒りを、多分生まれて初めてだと思うが出した。・・・・・・・(それ)から仕事が凄く楽になった。疲れてもよしやるか、となる。」
<W>
よかった!生まれて初めて・・・。乾杯!
<H>
こんな時はその夜などに乾杯しますね。
<W>
その時はどうでしたっけ?
<H>
実は私もあまり覚えていません。乾杯はしょっちゅうやってますから。(笑)
<W>
次、いきましょう。
<H>
怒りが出せるようになって、閉じ込めていた自分自身の気持ちに気が付くようになります。「お母さんに愛して欲しいというのを、子供の時に諦めている。無理だと。でも本当は求めていた。単純に抱きしめて、添い寝して欲しい。(でも母は)いない、(私を)見ていない、だから諦めた。怒りより、寂しさが今回出てきた。」
<W>
生まれて初めての怒りが出せて、生まれて初めて本当の「愛して欲しい」が出ます。
<H>
感激します。
彼女は言います。「発見って楽しい。自分を知っていくのは楽しい。今年の春は一番の春だった。桜がきれいだし緑が・・・と良い春が来た。こんな感覚始めてだなと。」
「子どもの時っていつも死んじゃうような不安があって生き急いでいるようなのがあった。(大人になっても)早く仕事で一人前になりたいとかだった(不自然に急いでいた)。本当は死にたいのかなと。早く消えてしまいたい自分がいたのだろう。」
<W>
そういうことなんですね。
<H>
彼女は、階段の途中(図4)は長いことかかって、ていねいにやりました。納得するまでやりました。それがよかったと思います。本人(彼女)が納得するまで。結果的に、進みが速かった。


絵5
<最初からいらない子:無条件の死>
<W>
いよいよ、です。
役に立たないならいらない(絵3)という「いらない」の意味は、母の殺意でした。つまり死でした。「役に立たないなら」という条件付きの死でした。その殺意は幼い彼女の中に取り込まれ「本当は死にたい」「早く消えてしまいたい」という自分を形成しました。それが、やがて絵5のように解明され、役に立っても立たなくても最初からいらない、無条件の死ということが分かって、大きな手がかり、大きな解放になりました。
<H>
はい。
この絵5に描かれているように、怨みツラミを繰り返す母に、彼女は何とか役に立って生きようとしがみついつきます。しかし、母は振り返らず、怒ったまま、まるで脚にとまったセミでも振り払うように、彼女を振り払います(絵の左下)。それは繰り返えされ、母は永遠に振り返らず(絵の中央)、彼女はどこまで行っても果てしなく一人ぼっちでした。そして彼女はついに悟ります。自分は、役に立っても立たなくても最初からいらない子だったのだ(絵の右上)。無条件の死がそこにありました。
このことは、大きな手掛かりになり、彼女が解放される転換点になりました。彼女は言う。それまで仕事で対面する「お客さんも怖かったけれど(無条件の死に気が付いたときから)(何かお客さんからのクレームがあったときなどの)「どうしよう、どうしよう」というのは無くなったかな。〈余裕が出てきたよね、何でそうなったのでしょうか〉役に立とうとしてもしなくても「いらない」だった。「最初からいらない」は大きい。「役に立つなら良いよ」にしがみ付いてきたから役に立とうとニコニコしていた。その呪縛が取れた。(本当の気持ちから)仕事したい自分もいるし、しなくてはいけないという呪縛が取れた感じ。「役に立たないとダメ、頑張らなくちゃダメ」が無くなった。」
<W>
無条件の死で解放されるというのは、ベビーブレスを体験した人に共有できる凄味です。
<H>
一生ものですね。こんなブログだけでではなく、人のお話だけではなく、ぜひ体験してほしいです。

絵6
<無条件の死から無条件の生へ>
<W>
彼女はさらに進みます。
<H>
この図6では、左端に彼女が描かれ、目の前には、果てしなく遠く暗黒の宇宙へ続く無条件の死があります。彼女は、小さな地球の上で大の字になって、暖かさを感じ、無条件の生命を感じています。
<W>
無条件の死を受け入れたら無条件の生命が待っていた・・。

<H>
彼女は言う。「「役に立たないならいらない(絵3)」「役に立つならいていいよ」と、長い間味わってきた。そこを味わっていた。ずっと寂しいもの。条件付きのもの。それが、無条件で「いらない」(絵5)。永遠に一人ぽっち。その気づきがこの前だったが、ずっと引き続いてきたものは死だった。・・・じっくり味わっていた。そうだよなー、と。
何もない感じで瞑想していたら、ちゃんと「生きる」がある。正反対のものだけど「生きる」がある。(今まで生きてきたのは)ずっと誤魔化しの生きるだった。死をないことにするために、生きていいために、誤魔化しの死、だった。長い間生きてきたけど、我慢してきたんだなと。瞑想の時、ポッとお腹の中に「生きる」があった。嫌な感じはしない。(そこを)もっと味わいたい。良いよねと。(今まで、見かけ上は)生を引き継いできたけど(実は)死を受け継いできた。」
<W>
無条件の生という開放を手に入れた・・・。無条件の死を受け入れたら無条件の生命が待っていた。生と死の統合の目覚め・・・。

(続く)

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役に立たなければいらない1/3|早く消えてしまいたい|アコールセラピーの現場から(711)

1/3

<W>
今回はある女性の話です。彼女も抜けていきましたね。
<H>
ほんとにうれしいです。とても魅力的な女性になりました。
彼女は、初めは周りばかりが気になり、笑顔で居ないと嫌われると思っていました。
<W>
問題を忘れないように、ニコニコ仮面という名前を付けてもらいました。
<H>
後で話題になりますが、ニコニコ仮面の裏には、「早く消えてしまいたい」というような辛い心境が隠れていました。
<W>
では、その種明かしを、彼女の絵と記録(以下「 」書きの部分)にしてもらいましょう。彼女が描いた絵を見てきましょう。

絵1
<我慢してニコニコ仮面>
<H>
絵1は彼女の当初の不全感を表したものです。上のほうには、①「何も言わせない」「世間の目」から見られ「怖がって遠慮している私」がいて、②誰かに「守って」「助けて」と訴えますが、③④ 父という壁や母の呪縛があって苦しみます。
<W>
絵1の中の「エ エ」は人の目ですね。いくつかのシンプルな人型は彼女自身でしょうか。
<H>
はい。もっとも、その中の3つ目の人型は母親かもしれません・・・。
<W>
この時代は母親と自分の区別があいまいなのかもしれません。
<H>
彼女自身の説明です。「我慢する。周りにばかり気にする。笑顔で居ないと嫌われると思う。ニコニコ仮面をしていないといられない。寂しいということを自覚するのが怖い。」
「環境は悪かったと思う。親は笑っていない。自分は笑っていた。贅沢はいらないから明るくいたいと思っていた。ご機嫌を伺っていた。」と説明します。
<W>
今だから「ご機嫌を伺って」などと言えますが当時は大変だったことでしょう。

絵2
<役に立たなくてごめんなさい>
<H>
母という呪縛は、母からの怨みツラミを聞かされてつくられます。絵2には、右上の母親が、左下の彼女に向かって、怨みツラミを放っています。
<W>
小さな彼女が、黄色の丸いバリアで自分を守っている様子は、痛々しいです。
<H>
母親と父方の祖母(おばあちゃん)には確執があり、彼女はその板挟みになります。
彼女は言います「子供の時は、母は「早く死にたい」と言っていた。愚痴を言っていた。「あんたはおばあちゃんに可愛がられていいわよね」」と。小さな彼女は「役に立たなくてごめんなさい」と思うしかありませんでした。
<W>
そもそも母親に「早く死にたい」があったわけですね。
<H>
世代間伝達が暗示されます。

絵3
<役に立たないならいらない>
<W>
この絵(絵3)は絵2をさらに詳しく描いたものですね。自分の気持ちを言ってはいけないと、押し殺し、閉じ込めています。
<H>
母から怨みツラミの中には、お母さん自身が「死にたい」と言うことと、お母さんのヒステリックが多く含まれていました。
彼女は「お母さんがかわいそう。お母さんごめんなさい。役に立たなければ(自分は)いらない」と思います。
<W>
そうなんですね。小さな子供(彼女)は、母の気持ちを自分の気持ちとして受け入れます。ある意味では母と自分の区別がつきません。絵を見ると、彼女は、怨みツラミを放つ母親を抱きかかえています。
<H>
他方では、後で思い起こすと、「自分の気持ちを言ってはいけない、押し殺していた」と言います。また、「小学生の時に母親に「もう殺して」と言った覚えがある。生きている心地がしなかったと思う。家(うち)は何で(こんな辛い雰囲気なんだ)という話をしていたと思う。「お母さん死んで」じゃなくて、「私を殺して」だった。・・・言った自分が申し訳ないと思った。困らせたと。今なら(母親は)子供にそんなことを言わせるなよと思う。」と言います。
<W>
「言わせるなよ」というのは自分が回復してきたから、自分自身が出てきたから、言えることですね。
<H>
自我がしっかりしてきた。
でもそのころは、自分というもの(自我)は頼りなく、母親にしがみつくしかなかった。
彼女は言います。「漠然と母の殺意が怖いというのがあって、(母に)凄くしがみ付いている。小さくて怖くて泣いていて。私に取って母の殺意は「役に立たないならいらない」だった。「いらない」ってやられるのが怖くてしがみ付いていた。」と。
<W>
この「役に立たないならいらない」というのは大きかったですね。長い間彼女を支配していた大きなものです。そのことに彼女は気が付き、カウンセリングのたびに自分のテーマにしていました。彼女の中がずんずん進んでいったような記憶があります。
<H>
大人になり彼女自身も、そのことの加害者になったという事件があります。ある時お付き合いしていた人との結婚を望んでいました。妊娠しましたが、その人は結婚に同意しませんでした。彼女は堕胎しました。結婚という目的に役に立たない子供を堕胎したんだと、彼女は言います。同じことをしてしまったと。
<W>
彼女はそれまでにも増して真剣になりました。進んでいきました。

(続く)

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現代の悟り:見捨てられ感から悟りの道|アコールセラピーの現場から(710)

「現代の悟り:見捨てられ感から悟りの道」
<W>
ブログ(705)(706)で悟りとの類似性を話題にしました。
<H>
アコールセラピーが似ているということですね。
<W>
はい。すこし、続きをさせてください。
<H>
どうぞ。アコールセラピーが現代の悟りだという話ですね。
<W>
悟りというのは日本の禅仏教だけの概念ではありません。
他国の宗教にも似た概念があるようです。エンライトメントとか言うこともあるようです。
<H>
うんうん。それで・・・。
<W>
宗教の話をするには、宗教とは何かが、ある程度はっきりしていないと、実のある話にはなりにくいです。しかし、宗教といえば、心が解放される点(悟り)、そのために死を扱う点などは共通していると言っていいと思います。大ざっぱですが・・・。
<H>
なぜ死なのか、ということですね。
<W>
そこです。寿命という意味の死だけでは、説得力がないですね。毎日、宗教家が修行するのに、50年先の寿命の死をどう扱うのかを目標にしているなどとは・・・。
<H>
毎日修行するのですから、もっと時々刻々の切実な心的欲求があるはずだと・・・。無意識では。
<W>
その通りです。
<H>
定説ではないけれど、イエスキリストの原罪というのが、彼の出生の秘密に関係していて、母マリアから本当の愛情をもらえなかったことから来る、というあれですね。
<W>
キリスト教を例にすると、ということですね。はい。
二千年以上前のことですから真相がわかるということは望みにくいけれど。根強くささやかれるというあの話です。例えばですが。マリアがローマ兵にレイプされてできた子供がイエスで、マリアが信心深かったので、イエスの命を長らえ、何とか育てたけれども、本当にはイエスを愛することは、決してできなかった。
<H>
感性豊かな子供であったであろうイエスの心は、深く、深く傷ついたでしょうね。
<W>
イエス自身には何の落ち度もないのに、絶対に真の愛情はもらえない。意識の底では本当は嫌われ続けるのですから。自分には、生まれる前からの原罪というのがあるのだ、ということにも当然なりますね。
<H>
深い得体のしれない殺意を抱いた殺人者になっても不思議ではない、ひどい話ですね。
<W>
深い殺意の裏には死があったでしょうね。
<H>
あったでしょうね。実は死を望まれていたでしょうから。いらない子。
<W>
母子関係からの死です。母親からの見捨てられ感からの死です。
そこを観られれば、悟りの道まっしぐら。
<H>
母親からの見捨てられ感は現代に溢れかえっていますね。だから見捨てられ感から悟りの道へ入っていけるということですね。
<W>
そうです。
現代の悟りの道です。
<H>
苦しむだけではもったいないということでしょうか。
<W>
まさに。医療は役に立たない。自分を変えられない。薬に頼らない。慰めに頼らない。事実を観て自分で自分を変える。苦しみを抱えた現代人の突破口。現代の悟り、です。
<H>
究極の健康が手に入るということでしょうか。
<W>
そのハウツウが、愛憎の統合、生死の統合です。
<H>
その統合についは既に別のブログで話していますね。
<W>
何度でも話したいです。

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私わかった!3/3|アコールセラピーの現場から(709)

前回の続き<<私わかった!3/3>>

⑨ <死に対抗する狂気、あるいは死そのもの>


<W>
絵の⑦⑧のように無表情になったり分裂したりして、自分を隠しますが、うまくはいきません。隠された自分は必ず復讐します。心の中に温存されます。それがこの顔です。
<H>
よく描いてくれました。
<W>
揺らぎがあるものの、彼女の持つ強烈なエネルギーがレーザー光線のように、ときどき、本質を突きます。
<H>
ズバリと突きますね。
<W>
死に対抗する狂気の顔です。あるいは自分を脅かす死そのものなのかもしれません。狂気か死そのものなのか、この辺は一体混沌でしょう。

⑩ <私の死、死を受け入れた自分を包み込む>

彼女自身からの説明です。
「私の死です。今までの私の死は突然現れては私を追いかけ回してくる暗くて寂しくて恐怖そのものだった。私の死のイメージは母からの死だった。(死から逃げ回ることをやめ向き合って)この“死”という事だけに必死に焦点をあてて、怖くても蹴り飛ばしたくても(そうせずに)純粋に死だけを願っていた時に「私の死は自分で決める!!奪わないで!!」
と私の中から出てきた。その時の死は私を包み込んでとても暖かく物凄く愛情があり私の全てを優しく包み込んでくれた。その死は、母からの死ではなく、私の中にある私だけの死だった。その私の死を絵にしたものです。」
<H>
やりました。ついに。
<W>
そうです。受け入れが起きました。
<H>
私もその現場にいました。
しかし、彼女の激しい気づきにしては、上の絵は、なんだか穏やかすぎますね。
<W>
そうです。
私の感じでは、上の⑨と⑩の間には、死を受け入れる大きな、大きな激しい気づきがあった。
彼女の大きな気づきは、まるで嵐の中の遭遇のようでした。それまでのはっきりしない謎のようなものが消え、「私わかった!」と叫んだ彼女の顔が今でも思い浮かびます。
しかし、絵には描かれていない。その気づきの瞬間はあまりにも痛く、あまりにも強烈で、絵にできないのかもしれない。あるいはいまだに痛すぎて、完全には思い出せないのかもしれない。上の絵⑩は大きな嵐が過ぎた後の絵のようです。結果の絵です。
<H>
ここで「私の死のイメージは母からの死だった」とあります。はじめて認める感じです。
<W>
彼女の心の中には、そのことは既にあったのでしょうが、外に向かって認めるのは、遅れる傾向にあります。あなたの言う「わかりたくない揺らぎ」が遅れをつくるのだと思います。
<H>
絵の話ですが。真ん中の小さな丸い黒っぽい部分が死で、その死をピンク色の小さな自分が抱えています。小さな自分が、それまでの自分でしょう。その死を抱える小さな自分を、死を受け入れた大きな暖かいオレンジ色の自分が、包み込んでいます。死を自分のものにした状況ですね。
<W>
「私だけの死」という気持ちを表した絵ですね。
「私だけの死」というのは、母親から強制されていやいや死んでいく自分というのから縁を切ったともいえます。自分自身で自分の死を引き受けるということだと思います。自分で死を引き受けた時に初めて、自分自身が生きていけるという、そういう風に言えます。
彼女の強い怒り、すなわち生きるエネルギー・・生と、ここで受け入れらえた死が合体して、生と死の統合がなされ得たと言って構わないと思います。

⑪ <母親(の母性)との和睦>

彼女自身からの説明です。
「おっぱいを飲んでいる絵です。私が母に置いて出て行かれた(絵⑤)時、母を探し母が恋しくて、おっぱいが恋しくて、温かい母乳が恋しくて、泣いた。泣いても、泣いても母はいない。母の気持ち、母の意識もない。寂しくて、怖くて1人で死を目の前に突き付けられた感じだったが、それでも私は母を求め、おっぱいを求め、母乳を求めた。私の純粋に母を、そしておっぱいを求める気持ち。そこに母親がいなくても母の意識がなくても私の中にある理想のおっぱい=理想の母親を絵にしたものです。」
<W>
子供(彼女)に愛情を与えられない「現実の母親」を卒業し、「理想の母親」が手に入った。あるいは「母親そのもの」から、「求めるという自分自身」に、重心が移った。自立。言葉にするとそう言えるかもしれません。
<H>
「そこに母親がいなくても母の意識がなくても」かまわないという心境ですね。
<W>
ええ。
そのような心境に意識してなろうとしても無理ですね。自立しようと思っても無理です。それは結果ですね。
<H>
あれですね。
<W>
あれです。
統合です。
それまで自分に死を迫る母親に対して、心の奥では怒りがあったはずです。彼女の激しいエネルギーに支えられ、激しい怒りがあったはずです。わからないまま怒りパニック発作にも一役かっているのでしょうが、怒りはそもそも、生きようとする生のエネルギーです。
ところが反対側には、彼女は長い間嫌い続けましたが、死がありました。自分自身の死の狂気があったはずです(絵⑨)。その死を受け入れた途端に自己の回復が起き(絵⑩)、母性との仲直り(和睦)が行われました(絵⑪)。すなわち生と死の統合です。
<H>
自立したいなら統合せよ。統合を目指すなら死を受け入れよ・・。
<W>
彼女の場合は、怒りという生が強すぎ、死を徹底して嫌っていました。逆の人もいます。その場合には、起きるプロセスは異なります。その場合には、生を受け入れよ・・・が起きます。
<H>
最後のおっぱいの絵は印象的でした。私の場合と似ていました。
<W>
あなたの場合も、口に入りきらないほど大きな乳首のイメージが出てくる、あるいは空いっぱいに広がる乳房のイメージが出てくるということでしたね。
<H>
この記事で彼女のケースを全体として観ることができますね。よかったです。ほかの人の勉強にもなります。
<W>
最後に、この記事の掲載に協力し許可してくれた彼女自身にお礼を言いたいと思います。

<<終>>

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私わかった!2/3|アコールセラピーの現場から(708)

前回の続き<<私わかった!2/3>>

③ <振り向かない母親>

<H>
はじめの頃は、彼女は自分のパニック障害が母親と関係があるなどとはわからなかったと思います。セッションが進むにつれて自分の心の中に引っかかりがあり、それが③の<ふりむかない母親>という形で思い出されました。いくら自分が母親の愛情を求めても、母親は振り向いてもくれないというイメージです。扱いたくない母親との関係を、ようやく扱うようになるきっかけといってもいいと思います。
<W>
これで前進することができるという場面です。

④ <泣き叫ぶ自分>

<H>
泣き叫んでいる自分は、母親との関係で泣き叫んでいます。母親の関係が非常に大きいとわかってくる段階です。
<W>
上の③の絵は、子供が笑っていますが、無理して笑いかけているのでしょうか。無事にしたいのでしょうか。④の絵は、大泣きしています。本音ですね。

⑤ <おいて行かれた恐怖>

<H>
暗闇の中に簡単に小さな自分が描かれています。母親との関係を探っていくうちに、ある時、母親から自分が置いていかれた事件を思い出します。その時の恐怖を描いた絵です。この恐怖が後になってパニック障害につながっていることが徐々にわかってくる糸口のような絵です。
<W>
置いて行かれた事件についての恐怖ですが、さらに探っていって、単にその事件だけにとどまらず、自分を置いて行ってしまえるような母親への恐怖が、背後にあることがわかります。次の絵が、それを暗示します。
<H>
彼女の場合には、長い間、暗示にとどまっていました。

⑥ <襲い来る恐怖=死>

<W>
上の④⑤の恐怖がどれだけ大きなものかという事を示す絵(⑥)です。まるで大きなモンスターに小さな赤ちゃんが追いかけられている感じがよく出ています。赤ちゃんがとらえた恐ろしい死のイメージです。パニック障害のからくりを示すような絵です。
<H>
モンスターにパクっと一口で食べられそうです。

⑦<感情をなくして耐える自分>

⑧ <分裂して耐える自分>


<W>
小さな赤ちゃんにとって、⑤⑥のような恐ろしい恐怖に耐えられるはずもありません。
<H>
まるで荒野に一人ぼっちになって背後に巨大な肉食獣(モンスター)が忍び寄って、今にも食べられそうな恐怖です。
<W>
肉食獣なら、まだ、いい。母親です。耐えられません。
<H>
ほんとに。
<W>
感情をなくして、怖いという自分を味わわないようにして耐えます。⑦はそのころの無表情な自分を描いています。表情がないどころか顔が書かれていません。まるで自閉という状態を暗示するようです。
<H>
自閉して無表情になって耐えようとするんですね。
<W>
しかしそのように感情をなくすだけでは、十分には、本当に恐ろしい恐怖には耐えられません。自分を分裂して(⑧)何とかやりくりして耐えようとします。明るい自分と、そうでない闇の自分です。そうすれば闇の自分は横に置いておいて、明るい自分として楽しく過ごすこともできるようになります。そのようにして何とか生きていきます。
<H>
そのようなものすごい恐怖は、置いて行かれた事件(⑤)というだけでは、説明できない。ほかの部分(③④⑤⑥)も併せてみると、母親への恐怖ということでしょう。
<W>
自分の生命のすべてを支えている母親自身が、実は、死の恐怖の出処でしょう。
<H>
全体としては示されますが、ずばりの絵を彼女は、描いていません。
<W>
わかりたくない、というのがトラブルの中心にある芯かもしれません。はじめの絵(①)の彼女自身の説明にもある子供に対する思いの揺らぎようなものが、母親に対する思いにもあるように感じられます。
<H>
わかりたくない揺らぎですか。

<<続く>>

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私わかった!1/3|アコールセラピーの現場から(707)

<<私わかった!1/3>>
<W>
今日は、パニック障害が治った女性の話です。その話から、人がどう治っていくか、事の全体を観られるといいと思います。
<H>
はい。
<W>彼女は、女のお子さんを持っていますが、自身のパニック障害から逃げるのが精いっぱいで、子育てに苦労しました。
<H>
パニック障害や子育ての問題は、いわば表面の話で、こういう問題は奥が深いですから。彼女の場合には、その奥に手が届きましたね。その人全体に大きな変化がありました。人間性の回復ですね。
<W>
その通りです。まずは、大きな、大きな山を越えましたね。本当によかったですね。
<H>
人生を取り戻したことでしょう。うれしそうな彼女を見ていて、心の中~のほうが明るくなった彼女を見ていて、こちらもうれしいです。
<W>
まったく。
少し戻します。
今回彼女の話をするのは、彼女の全体を見ていくためです。超えた山があまりに大きいので、全体が見えにくいということがあります。
<H>
彼女自身の性質にもそういうところが、まだ残っています。
<W>
他の人たちにとっても、全体として何が起きたのかということを眺めてみることは、とても役に立つことだと思います。
<H>
はい。本質的な部分は共通しますからね。たとえパニック障害や子育てとは関係ない人でも、問題の本質は同じですから。
<W>
さて、以下に掲げるように、今回は彼女が描いた絵を中心に話を進めます。
その絵のことです。私たちは、セッションの後で、カウンセリングのまとめを文章化して本人に渡し、「後日何度も読み返してください」とお願いすることをしています。しかし文章は時間をかけて読まなければならず、読んだ内容をまとめて全体を見渡すことができにくい。その点で絵は、一目で見て、感覚的に自分の全体をつかむことができます。そのため、何かの気づきのたびに絵を書いてもらうようにしています。
彼女の場合も絵を描いてもらいました。わかりやすい絵を並べてみました。彼女のセッションの進み具合を全体的に理解できると思われます。
<H>
では見ていきましょう。この絵(①)ですね。
<W>
そうです。右上に、小~さな子供が描かれています。真ん中は、本人自身です。

① <子育てができない>

彼女自身からの説明です。
「この(絵の中央の人体は自分で、その)二重の部分は、本当の自分に蓋をして抜け殻になっている感じです。抜け殻の私と、その私を見つめている娘の絵です。
(私は)娘が産まれてから「育てられない」と思った。でも、その奥では「育てたい、(健康に育って)私のようになって欲しくない」とも思っていた。まだ新生児の時は良かった。おっぱいをあげればまた寝てくれたから。でも、娘がお座りをするようになると、朝しっかりと目が覚め、おっぱいをあげても寝てくれなくなった。それでも私は体が動かないので娘を放置して寝ていた。そんな私を娘は私の側でジッと私を見つめて座っていた。オムツはおしっこでたっぷりになり、うんちもしているからビチャビチャで気持ち悪かっただろうに、娘は泣かずにジッと私の側で座って私を見つめていた。
この時の私は、後のセッションで、抜け殻の状態だった事が分かった。育てられないという娘に対する殺意を抜け殻の状態でいる事で私は(殺意を実行せずに)娘を守った。私の娘に対する愛情でもあったことは事実だ。でも、娘の事はどうでも良い、どうなっても良いという私の殺意があった事も事実だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
本当の私(絵の二重の部分の内側)がいるのに、しっかりと蓋をし隠し正面から私を見る事ができないので、被害者の抜け殻の所にいる絵であり、この頃が子育てで1番辛くて、ハッキリと覚えているけど思い出すのが辛い所の絵です。」
<H>
抜け殻でいることで子供を守ったんだと彼女は繰り返して主張していました。抜け殻でなければ殺意を実行したんですね。
<W>
「守った」ことを強調しないと危ないということです。
<H>
その意味では殺意に十分には向き合えてはいません。
<W>
この絵の子供の存在の小ささが印象的です。「子供」を守ったという意味の絵にしては、主役の子供が小さすぎます。
<H>
抜け殻になることで何かから耐えた、といことですね。主役は、隠された殺意、でいいでしょうか。
<W>
この後の絵で、感情を無くして耐えたり、分裂して耐えたりする絵が出てきます。抜け殻も、耐えるための守りの一つといえると思われます。

② <襲い来る何か(死)から必死に逃げる パニック発作>

彼女自身からの説明です。
「これは1番辛かった時期の絵です。死の恐怖から必死で逃げている絵です。突然と現れて必死に逃げても死の恐怖が迫ってくる。自傷する(彼女には自傷歴があります)ヒマを与えずにどんどん迫ってきて、死の恐怖に飲み込まれないように、絶対嫌だと無我夢中で必死で逃げて逃げまくった。
とても寂しくて、孤独で、死が目の前に(恐怖が)くるから1人で耐えて、死の恐怖を永遠とまた味わいたくない、耐えたくない、感じたくない、お願い、誰か助けて!!と必死でもがいた。私は死にたくない・・・怖い、絶対嫌だと必死で逃げているのがパニック発作、過呼吸の原因でした。」
<H>
彼女の問題は子育てがうまく行えないというのもありましたが、1番の問題はパニック発作が起きて苦しくてしょうがないという事がありましたね。その原因は、上の説明で彼女は「死の恐怖」と言っていますが、もちろん本人は最初はわからない。ただひたすら発作を起こして暴れたり泣いたりすることのようでした。
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わからないこそのパニック発作ですね。
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当時はもちろんそういう死との絡みで理解する事はとても出来ませんでした。得体の知れない恐怖です。得体が知らないので余計苦しくて恐ろしいということだと思います。恐怖を振り払おうとする彼女の強烈な怒りで、周りの人々も、大変でした。
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わかりたくない、ということもありますね。それがトラブルの中心にある芯かもしれません。

<<続く>>

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