22 圧倒されて沈黙-生きていたことを感謝

過去の辛い記憶を扱うことへの批判がある。過去のことにとらわれずに前向きに「ポジティブ」に生きるべきだ。辛いことをせっかく忘れているのに思い出さすのは酷すぎる。などなど。

じょうずに説明するのはとても難しい。ひとつには、経験して初めてわかるという事情がある。言葉で説明してもなかなか伝わらない。あんないいことがある、こんないいことがある、と説明しても、むなしい。空がきれいに見える、人間関係がよくなる、などと言っても、本当には説明したことにはならない。外側の一部を触れる程度。その人の内面の実態が変わったことを説明できた訳ではない。経験したときに初めて、言葉が無意味であることを知る。圧倒されて沈黙する。わけもわからず涙しながら帰りの道を歩く。生きていたことを感謝する。だから、むなしいと感じても説明し続ける。

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