たとえば眼の病気|心身症|セラピーの休憩タイム(683)

「W」
映画「Ray」を見ました。見たことがありますか。
「H」
どんな映画ですか。
「W」
盲目の音楽家レイチャールズの生涯を描いたものです。その中で失明の原因を心の傷として描く部分がありました。
「H」
見たかもしれませんが、はっきりは覚えていません。ジャズの音楽家ですね。
「W」
はい。
彼が幼い頃に、弟が水死する状況を黙って見てたことを、母親に激しく叱責されるシーンがありました。なぜ「見てたの!」と責められました。その直後に彼は目の病気(緑内障?)になり始め、やがて失明します。まるで「見てた」ことが悪いというようにです。その後、失明に負けず成人し有名な音楽家になりお金にも不自由しなくなります。そして麻薬にはまります。
「H」
麻薬は、演奏や作曲の際の感性を高めるという意味もあるでしょうね。ショウビジネスの世界の厳しいストレスもあるかもしれません。
「W」
まるで、アメリカの音楽家のお決まりのようです。
「H」
日本だって無縁ではないですね。
「W」
はい。
レイチャールズの場合に、この映画では、麻薬依存には更に深い意味があります。彼は、何かの拍子に、得体のしれない小さな水死体の幻覚を伴うフラッシュバックに苦しみます。そのためか更に麻薬に依存し、重度の麻薬中毒になります。
「H」
なるほど。
「W」
音楽家の生命が断たれようとするときに、彼は麻薬を断つ決心をします。激しい禁断症状の中、禁断症状を緩めることができるとして医者から勧められた薬の使用も拒否し、耐え抜き、ついに恐怖に勝ちます。そのきっかけとして、水の中から溺れる子供を拾い上げる幻覚を見ます。小さな弟は死んでおらず、生きて彼と抱き合います。そして中毒症状からぬけて、音楽家として回復します。
「H」
ふんふん。
「W」
この映画がどこまで事実に基づくものか分かりませんが、リアリティーがあり脚本や演出に感心しました。
「H」
心身症という概念がありますね。
「W」
はい。心の傷が身体の病気の原因になり得ることを示すものです。
この映画を仮に事実として見ると、次のように解釈できます。主人公は無意識に、弟と、母親からの愛情を得る競争状態にあって、つい殺意が出て弟を見殺します。
「H」
一般的な健康な兄弟関係でも、愛情をめぐる競争状態はありますよね。無意識まで探れば殺意も珍しくはありません。
「W」
はい。
彼は、その殺意に対する自分の罪悪感から、罪悪感をぬぐおうとするフラッシュバックを経験します。
「H」
弟の水死事故というトラウマを、何度も思い出すことで消化しようとするんですね。
「W」
特に、自分が殺したという罪悪感がありますから・・。
「H」
「やっちまった」とね。
「W」
しかし、母からの愛情は己の命のもとであり、それを損なう弟への殺意を容易にキャンセルできない。譲れない。
「H」
意識からは消せてもね。
「W」
そうして彼は簡単には克服できず、葛藤(フラッシュバック)は続きます。麻薬に溺れる原因にもなります。しかし楽譜も読まずに名曲をつくれる感性の鋭さから、自分の苦悩の原因を悟り、原因から逃げることを止める決心をします。
原因に立ち向かい、昔できなかったこと、弟を救い上げることを、ついに実行します。年老い傷んでしまった目自体は回復しませんが、音楽家としての健康さは回復します。
「H」
似た例を思い出しますね。古沢平作のエピソード。
「W」
そうなんです。
古沢平作はフロイトの精神分析を日本に導入した人ですが、目に障害を持っていました。愛弟子、木田恵子の伝えるところによると、古沢は乳児の頃に、母親から乳をもらえず他の女性からもらい乳をしていましたが、その乳(命)を飲む至福の時に、女性自身の子供から来る非難の視線に、睨み返すような視線で応じていました。その時の自分の罪悪感から、目が悪くなり障害を持ったということです。
「H」
そうそう。
「W」
レイも古沢も、命にかかわるような愛情関係の中で自分が得た罪悪感(心の傷)から、自分の目に障害を持つようになったということが、推測されます。
「H」
自分を責めるん(罪悪感)ですね。身体を悪くするほど。すごいですね。
「W」
仏教では心身一如という言葉がありますね。
「H」
心が身体にでる、ということですね。
「W」
蛇足です。レイは目に緑内障という器質的な疾患があったのかもしれません。古沢の目にも器質的な疾患を示す病名が付いていたかもしれません。障害を持ってしまった目自体を見れば器質的な疾患が確認されるかもしれません。しかし、器質的な疾患があれば、それが原因なのだから、原因が心の傷(心因性)ではないとするのは、短絡的です。器質的な疾患がなぜ起きたのかという視点がすっぽりと抜け落ちることになります。大間違い。

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